63.五日後
ハウロスは宿屋に着くと、神妙な面持ちで話し始める。
「昔、この国に来た時に知り合った人物でボルドーという男がいるんですが、その男はミルズの元国軍兵だったんですが、その後の話で軍を辞めたと聞いたんです。」
「元兵士?」
「はい。その辞めた理由というのが何でも現王ドルドスとの軋轢とのことで、もしかしたら協力を得られるのではないかとさっき会いに行ったんです。
それで、その回答が……全面協力してくれると。
ついては、仲間を連れて明日もういちど来い…とのことで」
「なるほど。その男は信用できそうなの?」
「わかりません。以前に一度会っただけですので」
……
「どうするんだ?カルマ」
「うん。行こう。その男のところへ、信用できるかどうかを見極める!」
「はい!」「おう。」
次の日、カルマ達はハウロスの案内でボルドーの元へ向かう。その一向の中にはアマンダの姿もあった。
カルマが作戦を立てるのに必要だと判断したのだ。
「ここです。」
そこはcloseの札がかかった酒屋だった。
中に入ると、1人の男が座って酒を飲んでいた。
「連れてきたぞ。ボルドー」
「あ?ああ、お前達が……良くきたな。」
男は体の大きな中年の男で、無精髭を生やした男だった。
「ボルドー、話は伝えている通りだ。お前の知っていることを聞かせてくれ。」
「ああ、いいだろう。まぁ、座れ。」
ボルドーはカルマ達を座らせると話し始める。
「お前達のような者が現れることは想定していた。
俺もドルドスと馬が合わずに公職を辞めた身だからな。
だが、ドルドスが王座についてから約2年、反旗を翻す者は出なかった。
なぜだかわかるか?」
「三傑……ですか?」
アマンダはその問いに答える。
「そうだ……あんたもドルドスから離れた身か?」
「私は……グラリス様の元秘書官です。」
「はっ、そりゃあ一番大変なお人だ」
「その三傑、というのは何?」
「ああ、このミルズは大きな国ではない。兵の数もそこそこ、戦士はいるが、地方の戦記協会というイメージで、あまり活気はない。
つまりこのミルズ王国は大した軍事力を持たぬ国だが、戦争や内乱では一度も負けていない。
"ある時期"以降は...
その理由はミルズ三傑と呼ばれる、三名の剣士が、この国の主力となってからだ。」
「ミルズ三傑?」
「ああ、筆頭剣士ガーディス、無限刀のラミ、矛使いグロウスの三名で、三名とも戦士ではないが戦士でいうと天級相当の剣士だという。」
「天級相当…」
「中でも筆頭剣士ガーディスは実際に元天級の戦士で、その中でも上位の天級戦士に並ぶ実力だったそうだ。」
現在存在している戦士の中で最も強いとされる天級戦士だが、その天級戦士の中でも上位に君臨する戦士は格が違うとされている。
現存の戦士の中で有名な者で言えば、
①最大規模の戦士団[ガルム・プラウド]団長、雷剣士ガルム・グラン・ドム
②ヘリオサマナ団長 天才術士アリディア・ミラ・ライトグラス
③多数の魔人を討伐する剛剣士 ダグラス・ミラ・フィーラン
④個人任務解決数no.1 英雄レイン
⑤単騎で緋衣の魔人を討伐した剣豪、氷結魔剣士ルドロス
の5名だ。
ミルズ三傑の剣士ガーディスはそれらに近い実力があるという。それはこの世界でもトップレベルの強さを持つ剣士ということになる。
それであれば、他国との戦争で負けたことがないというのも頷ける。
「そんな奴らが守ってるんじゃ厳しいんじゃ…」
「そこで…お前達に良い情報だ…」
「?」
「5日後、隣国のバルディッシュ王国で1年に一度の貴賓会がある。貴賓会は東側諸国の国々から大貴族が集まる会だ。
ミルズも毎年、この貴賓会に多くの貴族が参加している。
そして、そこに護衛役として、ミルズ三傑が例年派遣されている。だから狙うならそこしかない。」
「5日後…」
「その情報は信じられるのか?」
「信じるか信じないかはお前達次第だが、それが真実だ。それに元秘書官さんなら、毎年、三傑が護衛で派遣されていることは知っているだろう?」
「はい。例年、護衛のために国を出ていることは事実です。」
「そういうことだ……」




