2-8「ベルベスト山脈②」
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カルマが目が覚めると、全身が凍えるよう寒く、体の上に雪が乗っており身動きが取れない。
一体どれくらいの時間が経っただろうか。
何とか、魔術で手から炎を出し、雪から這い上がる。
周りを見渡していると、前日に出発した洞穴がある。
雪崩と一緒に随分と降ってきてしまったようだ。
「ハウロス、カミル?」
周りを見渡しながら二人を探すと、すぐ近くの雪から布生地が出ているのを見つける。
カルマは慌てて雪を掻き分けると、ハウロスが意識を失っていた。
「息はしてるな……」
カルマはハウロスを掘り出し、背負う。
周りを見渡したが、カミルの姿は見られない。
カルマは一旦、ハウロスを連れて、前日に寝泊まりした洞穴へ向かって歩き出す。
ハウロスを洞穴の中に座らせ、魔術で焚き火を作っていると、ハウロスが目を覚ます。
「ボス……?」
「よかった。ハウロス、ここで体を温めといて」
カルマはそういうと洞穴から出て行こうとする。
「ボス、どこへ?」
「カミルが見つかってないんだ。探してくる。」
「ボス……」
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カルマは雪の中、雪崩の跡を辿ってカミルを探す。
幸い降雪は強くない。
「カミル…どこだ?」
周辺を探したが、カミルは見つからなかった。
「しょうがない。あんまり魔力を使いすぎことはしたくないけど…」
カルマは周囲の地面に向かって両手を向ける。
「広範囲火炎」
カルマの魔術によって周辺の地面を焼くように広範囲に炎が上がり、雪を溶かしていく。
カルマはカミルを探すため、魔術を駆使し雪を溶かしながら斜面を登っていく。
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洞穴にいたハウロスは体が少しずつ動かせるようになり、ゆっくりと洞穴の入り口まで行き外を見る。
「これは……!」
ハウロスは目に飛び込んできた光景にぞっとした。
それは深く雪が積もっている山に大量の穴が空いているように、地面が溶け土が露出している箇所が複数個、奥まで続いているのだ。
ハウロスにはすぐにわかった。この異様な光景はカルマの魔術によるものだと、カミルを探すために魔術を使用し続けているのだと。
「ボス、カミル……無事でいてくれ…」
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カルマはカミルを探しながら山を登っていく。
「はぁ……はぁ……」
落ち着いていた天候も荒れ始め、吹雪がカルマを襲う。
魔力も底をついてきて、カルマの体力も限界間近だった。
「う……」
カルマは足を滑らせ、雪の上に倒れ込む。
冷たい……寒い……
足が痛い……目の前は真っ白で
寒さで指先の感覚がなくなってきている。
朦朧とする意識の中で、ぼんやりと頭に何かがよぎる。
(こんなこと前にもあったような…)
水晶の村を出て、雪が降り積もる山で一人、歩き続けた。体は芯まで冷えていて、真っ白い雪の中に埋もれていく。
そんな記憶が頭をよぎる。
(この記憶は…何だ、前世の記憶でもない。それに、この世界に来てからも、ここに来たの初めてだし……)
そんなことを考えながら、カルマの意識、雪の中に沈んでいく
(起きろ!おまえはまだ死んではいけない!おい!)
頭の中で誰かが叫ぶ声が聞こえる。
「誰…?兄さん……?」
カルマがその声に呼び起こされるように起き上がると、そこには誰もいなかった。
「……」
カルマは頭の中に巡った一連の記憶が何だったのか気になりつつも、カミルを探さなければと切り替える。
すると、目線の先、一面雪景色の中で一箇所、少し光を放つ場所を見つける。
「……?」
カルマは残った体力を振り絞り、雪を掻き分け、その場所に向かって歩いていく。
「……!」
そのわずかな光の場所へ行くと、そこだけ雪が溶けくぼみになっており、中には倒れ込むカミルのそばでメラが小さな火を吹いていた。
「カミル!」
「おお……」
カミルは力無く反応する。
カルマは窪みへ降りるとカミルに駆け寄る。
「お前がカミルを守っててくれたんだな。」
「キュー」
メラは役目を果たしたように召喚が解け消える。
カルマはカミルを背負い、窪みから這い上がる。
「大丈夫か?カミル」
「ああ…何とかな」
カルマはカミルを背負い、ハウロスの待つ洞穴へ向かい、一歩ずつゆっくりと進んでいく。
「カルマ……すまないな。」
「気にするなよ。君は俺の従者なんだろ?」
「ふっ……ばかだな。君は。主が従者のために危険を犯してどうするんだ…」
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しばらく歩き、洞穴へ到着する。
「ボス!よかった……カミルは?」
「大丈夫。意識もあるよ。」
「ふぅ。とりあえず助かった。」
3人は焚き火を囲んで腰を下ろした。
「にしても、酷い目に遭いましたね。」
「あのベルベストタイガー、とんでもない大きさだったぞ。」
「意図的に雪崩を起こしたのだとしたら、普通の魔獣ではないな。知恵、知能も高い。」
「カミル、横にならなくて大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。それに、こうして火を囲むのも悪くないと思ってね。」
「ハウロス、カミル」
「はい。」「ん?」
「おかしな話をしてもいい?」
「なんですか?」
カルマはパチパチと音を立てる火をぼんやりと見ながら、自然とその言葉が出た。
何故か今話しておこうと思った。
前世の記憶のことだ。
「……」
「どうした、カルマ」
いきなりこんなことを話せば、おかしな奴だと笑われるだろうか。でもいいか。この2人になら。
「……」
……
「俺、実は前世はこの世界の人間じゃないんだ。」
「え?」
カルマは前世の記憶の話をした。また、それを取り戻すに至った経緯も含めて…
........
「この世界以外にも違う世界があるなんて……」
「なるほどな。」
「え……?」
「どうしたんですか?」
「二人とも信じてるの?」
「嘘ではないんだろ?」
「嘘じゃないけど……前世の記憶があるなんておかしいでしょ?」
「不思議だとは思いますけど、でも、ボスはボスですよね?」
カルマはその言葉を聞いて、あることを思い出した。
昔カストリアでイリーナと出会った時、イリーナは不思議そうな顔をしていた。"なぜ自分はアラモなのに嫌がらないの?"と。
カルマはその時、名前など気にならなかった。むしろ過敏に気にするイリーナを不思議に思ったほどだ。
きっとハウロスやカミルもそうなのだ。
人は見た目や生まれ育った環境、性別や名前などで、すぐに区別や差別をしたがる。
カルマもその赤い左目を散々怖がられてきた。
けど、その人のことを知ろうとする人にとっては、そんな表面上のことなどどうでもいいのだ。
大事なのは、その人の心根や思考、感情など"心の根幹"なのだ、と。
「どうしたんだ?カルマ」
「いや、2人の反応を見て、昔の知り合いのことを思い出してね。」
「女ですか?」「女だな。」
「え…ちょっ……」




