58.謎の闇商店
「でも、ボス、この国に滞在するといっても、魔導図書館にはもう行けないですよね?」
「うん。衛兵に顔を覚えられただろうし、まともに街も歩けないだろうね。」
ハウロスはそれを聞いて何かを考える。
「もしよければなんですが、闇商店なる場所を知ってるんですが、行ってみますか?」
「え?闇商店?なにそれ。」
「この国では魔導書の売買は国が行う魔導図書館意外禁止されているんです。」
「非認可で魔導書を売っている店ってこと?」
「はい。そうです。」
「なんでそんな店を知ってるの?」
「前に仕事でミルズに来たことがあると話したと思うんですけど、その時に要注意の施設の一つとして聞いたんです。」
「ミルズ王国から要注意と思われてるお店だと、既に警戒されているんじゃ……」
「俺が来た時は反乱が起きていた時でしたから、あくまで反乱の火種になり得るという意味での警戒でしたよ。結局その店は反乱には無関係でしたからね。」
「なるほど、じゃあ明日行ってみようかな。場所だけ教えて。」
「わかりました。」
「カミルはどうする?」
「この間も言ったが私は魔導書の知識は皆無だ。悪いがカルマに任せよう。」
「わかった。カミルに合いそうなものが見つかったら声をかけるよ。」
「ああ、助かる。」
翌日、カルマはハウロスに教えてもらった商店に行くことにした。頭から頭巾を被り、衛兵に見つからないよう注意を払って路地裏を進む。
ハウロスに言われた場所まで到着すると、そこには既に廃業したと見られる古びた喫茶店があった。
「ここ……?」
カルマがガタついた扉を引っ張ると鍵がかかっておらず、恐る恐る中に入る。
「すみませーん。ん?」
中は人が住んでいる気配がなかったが、奥に地下へと降りる階段があることに気づく。
カルマはゆっくりとその階段を降りる。
カルマは階段を降りるとその光景に驚いた。
そこは天井が高く、入口や一階部分の大きさとは裏腹に広いスペースが確保されており、四方の壁には床から天井までびっしりと魔導書が並んでいたのだ。
「すごい……」
カストリアに魔導商店はなかったので、カルマはノーリエの家にある魔導書のほぼ全てに目を通していた。
この商店にはその何倍、何十倍もの魔導書があるのだ。
「なかなかのもんじゃろう。魔導書の数でいえば他国の一般的な魔導商店よりも多いぞ。」
カルマが驚いていると、老人が本棚の奥から姿を現す。
「あなたはここのお店の人?」
「ああ、そうじゃ。この商店を営んでいる。ユバルバじゃ。ここは事情ある者が集まる裏の商店、お主がどんな人物かは聞かん。何時間でも見ていくといい。」
「いいんですか!」
「ああ。ええよ。」
見た目はフードを被った不気味な老人であったが、カルマはユバルバの言葉に目を輝かせた。
そしてカルマは片っ端から本を読む。




