54.魔術士クレディア
壁に打ち付けられたローグベルトは体全体を霜に覆われ、周囲には砕けた氷柱が散乱している。
「ふぅ。」
カルマが一息ついていると、女魔術士クレディアが杖を構え宙に浮く。
「随分余裕ね。」
クレディアはそういうと、杖に魔力を集め、杖から炎がでる。
「あれは中級魔術の……」
「火炎放射」
噴射された炎がカルマに襲う。
カルマはバックステップしてなんとか避ける。
「多数氷矢」
クレディアはすでに次の魔術の体制に入っている。
クレディアの周囲に多数の氷の矢が作られ、
カルマに向かって飛んでいく。
「氷の壁」
カルマは地面から氷の壁を出現させるが、クレディアの氷の矢の威力が強く、壁に突き刺さりながら崩していく。
「そのままだとあなた、串刺しよ?」
壁の裏側からカルマが飛び出し、素早い動きでクレディアに接近する。
「魔剣フレイア」
カルマの剣に炎が灯る。
「大地の突棘」
クレディアはカルマのいく手を阻む様に地面から円錐状の棘を出現させていく。
(中級基礎魔術を次々と……、この女、中級の魔術士、いや、上級に近い実力がある?)
カルマは土の棘を魔剣フレイアで切り裂いていくが、クレディアに近づくことができない。
「くそっ!」
カルマは考える。目の前には自分よりも実力のある魔術士、そして思い出す。フィルスとの修行を…
カルマは手をクレディアに向ける。
「火花」
カルマの手から複数の炎が火花を散らしながらクレディアに向かっていく。
「いまさらそんな魔術で……氷の大壁」
クレディアは大きな氷の盾を発現し、カルマの魔術を防ぐ。
「!?」
気付けばカルマはクレディアの背後で剣を構えている。
「格下の魔術士だと侮った?」
「っくそ!」
カルマはクレディアに炎の剣を振るう。
クレディアも炎の盾をずらして防御しようとするが間に合わず地面に叩きつけられる。
「自分より技量のある魔術士を前にしても、自分より強い剣士と対峙しても、俺は負けない。それが魔術剣士だ。」




