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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編

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2-5「ミルズ王国動乱⑨」


*******

回想(グロウス視点)


 このミルズ王国はかつて、大国カイルディアとコロラド連邦に挟まれた緩衝地帯だった。


 戦は日常。


 炎は風景。


 敵兵の足音と泣き声が、街の音だった。


 グロウスも、その中の一人。


 名もなき戦争孤児。


 食べ物を求め、瓦礫の隙間を漁る日々。


 ある日、豪奢な馬車が街を進んでいた。


 衛兵に囲まれた、明らかに重鎮の移動。


 グロウスは躊躇なく飛び出した。


「なんだ貴様!」


 槍が向けられる。


「兵士でも、なんでもいい。僕に仕事をください……」


「何を言っている、このガキ――」


「待て。」


 低く、よく通る声。


 馬車の扉が開く。


 現れたのは、この国の王――ゴードンだった。


「仕事が欲しいのか?」


 グロウスは、ただ頷く。


 王はしばし彼を見つめ、静かに言った。


「ならば、一緒に来なさい。」


「なっ!?ゴードン様?」


「いい。出しなさい。」


 それが、すべての始まりだった。


 


 グロウスは兵士として育てられた。


 血を流し、骨を折り、何度も死にかけながら強くなった。


 やがてミルズ随一の矛の使い手と呼ばれるまでに。


 


 ある夜。


 ゴードンは城のバルコニーで語った。


「この国は、戦争が多すぎる。」


 夜風に乗る、重い声。


「侵略され、防ぎ、また奪われる。その度に兵は疲弊し、君のような孤児が生まれる。」


 拳を握る王の背中。


「私はね、グロウス。他国がこの国を攻めることを諦めるほど、強くなりたいのだよ。」


 振り返る。


 その目は、王ではなく、一人の人間の目だった。


「そうすれば、国民が傷つくこともない。君のような子も、もう生まれない。」


 その言葉は、少年の胸を撃ち抜いた。


「ゴードン様。僕は、陛下と共にこの国を強くするために命をかけます。」


「はっはっは。心強いな、グロウス。」


 


 その後、彼は噂を聞く。


 元天級の戦士が、故郷ミルズに戻っていると。


 会いに行った。


 それが、ガーディスとラミだった。


 ゴードンと引き合わせ、三人は誓いを交わす。


 ――ミルズ三傑。


 

 守れる国へ。


 攻められぬ国へ。


 

 そして、ミルズは強くなった。


 攻められても、守れる国へと。


 とりわけ元天級の戦士ガーディスは圧倒的だった。


 グロウスは自ら筆頭剣士の座を譲る。


 それでいい。


 国が強くなるのなら。



 やがて他国は、ミルズを攻めることを躊躇うようになった。

 

 夢は、確かに形になっていた。


*****


 

「僕は……ゴードン様の夢を守るため、負けられない……!」


 グロウスは血に濡れた手で矛を握り直し、ローグベルトへと踏み込む。


「おい!逃げろ!!」


「くそ……体が、動かん……!」


 振り上げられる矛。


「間に合わん……!」


 

 ――その瞬間。


「魔剣術

 炎(ほのお)

 抜ノ型(ぬきのかた)

 炎閃斬(えんせんざん)」


 閃光のような炎が走る。


「!!!」


 カルマの抜刀が、矛を横から弾き飛ばした。


 グロウスの手を離れた矛は壁を裂き、床へと突き刺さる。


「安心しろ。」


 静かな声。


「お前と、お前の主の夢は――俺たちが守ってやる。」


「……なに……?」


 直後。


 ドン、と鈍い衝撃。


 ダースの蹴りが、グロウスの腹を打ち抜く。


「ぐ……っ!」


 グロウスはそのまま崩れ落ちた。


「団長……」


「お前……蹴りって、土がないと本当に使えないんだな。」


「うるせぇよ!助けてもらったことには感謝してるがな!」


「ボス!」


「ハウロス、大丈夫か?」


「はい……なんとか。状況は?」


「悪いが時間がない。国軍兵が下の階まで迫ってる。」


「カミルは……?」


「あそこだ。」


 カルマの指差す先。


 壁にもたれ、意識を失っているカミルとクレディア。


「命に別状はないけど、戦える状態じゃない。」


「……よかった。」



*******

〈少し前〉


 カルマとダースは、国軍兵の足止めをガーディスに任せ、室内庭園を抜ける。


 辿り着いたのはとある部屋。


「なんだ……ここは。」


 扉の向こうは、異様な光景だった。


 無数の刀が床も壁も埋め尽くしている。


「これ、全部……刀か?」


「進める隙間がある。行くぞ。」


 二人は刃と刃のわずかな間を縫い、奥へ進む。


 やがて中央付近に、空白地帯が現れる。


「キューー!」


「メラ!?」


 カミルの召喚魔獣が駆け寄る。


「カミルがいるのか?」


 メラは振り返りながら先導する。


 部屋の隅。


 血に染まりながら壁にもたれるカミルと、倒れたクレディア。


「カミル!!」


「……メラ……連れてきたのか……」


「大丈夫か!」


「なんとか……だが、もう戦えん……」


 全身に走る無数の傷。


 クレディアも重傷だが、呼吸は安定している。


「あれが……」


 カルマの視線の先。


 倒れているラミ。


「ミルズ三傑のラミだ。魔力暴走で刀が無限に増殖した……この有様だ。」


「よく止めたな。」


「部屋が刀で埋まる前に、意識を奪った……それだけだ……」


「時間がない。背に乗れ。」


「……すまん。少し……寝る。」


 ダースもクレディアを背負う。


「奥に階段がある。三階へ向かうぞ。」


 


 こうしてカルマたちは三階へ。


 そして――


 ハウロスとの合流を果たした。


*****


 


  カルマはハウロスに現状を手短に説明する。


「分かりました。なら、ボスはバランを連れて四階へ向かってください。」


「王国軍が迫ってるんだぞ?」


「ええ。足止めくらいなら、なんとかしてみせますよ。」


「でも……」


 カルマが迷いを見せると、ダースが口を開いた。


「心配すんな。ミルズ三傑のガーディスが相手してるんだ。兵士どもがそう簡単に上まで来られるわけねぇ。

 来たとしても、俺はまだ動ける。ローグベルトも、そっちの兄ちゃんも……ボロボロだが立てるだろ?」


「そっちのボスも、ずいぶん人使いが荒いな。」


「がはは、違いねぇ!」


 カルマは小さく息を吐き、バランの元へ歩み寄る。


 そして、その手を握った。


「分かった。俺は四階へ向かう。危なくなったら上がってきて。」


「はい!」

「おう。」


「行こう、バラン。」


「うん!」


 カルマはバランを連れ、四階へと駆け上がる。


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