表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/129

2-5「ミルズ王国動乱⑦」


 

「私は……あの方の優しい手に救われた。」


 ラミの瞳が揺らぐ。


「だから、私には関係ない。

 たとえ彼の進む道が、正しいものでなかったとしても……!」


 その瞬間――


 ラミの刀が爆発的に増殖を始める。


 しかしその刃は、カミルやクレディアだけを狙ってはいない。

 無秩序に、部屋全体を覆い尽くすように広がっていく。


 空間そのものを埋め尽くす殺意。


 カミルは息を呑む。


「この気配……!魔力暴走だ!」


 ラミはカミルと同じく、生まれつき異常な魔力量を持っていた。

 だが違ったのは、その制御力だった。

 彼女は一度も暴走させたことがない。


 だが今――


 ラミは自らの意思で、その枷を外した。


「逃げようにも、扉はあの刀の向こう側よ……!」


 クレディアの声が震える。


 退路はない。

 迫りくる刃が、天井も床も視界も塗り潰していく。


「なら……あの刀の隙間を縫って攻撃を当て、

 奴の意識を刈り取るしかない。」


「あの数の刀を!?」


「やるしかない……!」


「くそっ!」


 カミルは弓を限界まで引き絞る。

 クレディアは氷の矢を生み出し、照準を合わせる。


 刃が、部屋のすべてを飲み込もうとする。


 そして――


 カミルとクレディアは、同時に矢を放った。


 ……

 _______



 

 場面は変わり、王宮3階のハウロス


 ハウロスはカミルと別れ、三階の廊下を進んでいた。


 逃げ惑う王族の姿はある。だが敵影はない。


「よし、このまま階段を見つければ、バランのお母さんのいる四階だぞ!」


「うん!」


 二人は廊下を駆け抜ける。


「……!」


 階段を目前にして、ハウロスは足を止めた。


 階段前に、矛を携えた細身の若い男が立っている。


 静かに、待ち構えるように。


「やはり現れたか……ミルズ三傑、矛使いのグロウスだな?」


「ここまで来るとはね。でも――ここは通さないよ。」


 軽い口調。だが隙はない。


(ボスとカミルが残りを抑えているはず……こいつさえ倒せば)


「悪いが、通させてもらう!」


 ハウロスは魔鋼を展開。短剣から長剣へと瞬時に変形させ、一気に踏み込む。


 刃を振り下ろす――


「魔術で変形?……いや、魔鋼か。」


 グロウスの矛が彼の手元で一回転する。


 次の瞬間。


「……!?」


 横薙ぎの一閃。


 ハウロスの長剣は、音もなく両断された。


 最高硬度まで凝縮した魔鋼が。


 剣先が廊下の石床に突き刺さる。


「最高硬度だぞ……鋼より硬いはずだ……」


 ハウロスの目が見開かれる。


 魔鋼は変形素材。だが凝縮すればあらゆる金属を凌駕する強度を持つ。

 そして今の一振りは、彼の最高到達点だった。


「驚くのも無理はないよ。」


 グロウスは矛をくるりと回す。


「これが僕の応徳剣術――

 どんなものでも貫き、切断する〈最強の矛〉だ。」


 刃先が床を掠める。


 触れただけで石が裂け、壁が滑らかに断ち割られる。


「出鱈目な能力だな……」


 間髪入れず矛が襲いかかる。


 ハウロスは魔鋼を次々と変形させ、盾に、鎖に、刃に変えて受け流す。


 だが――


 触れた瞬間、すべてが断たれる。


 魔鋼の欠片が、廊下に散っていく。


(まずい……削られてる)


 仕込んでいた魔鋼は多い。だが、無限ではない。


 切断、破砕を繰り返し、着実に消耗していく。


 やがて――


 最後の一片が、宙で断ち割られた。


 ハウロスは距離を取る。


「底をついたんだね?」


 グロウスが一歩、踏み出す。


「じゃあ――おしまい。」


 矛が振り上げられ、素早い踏み込みでハウロスに迫る。


「がはっ!」


 ハウロスの視界が揺れる。


 次の瞬間、ハウロスの肩から血が噴き出した。


 深い一撃、だが、致命傷には至っていない。


 それが逆に、グロウスの余裕を物語っていた。


「安心して。急所は外した。

 君は生かして連れて行くよう言われてるからね。」


 ......

 

 ハウロスは膝から崩れ落ちる。


「はは、あっけなかったね〜」


「勝ったと思った瞬間に隙が生まれる……」


「……?」


 廊下に散らばった魔鋼の欠片が、かすかに震えた。


 次の瞬間。


 無数の刃が地面から跳ね上がり、グロウスの体を貫く。


「……がっ!?」


 血が飛び散る。


「へっ……これで、おあいこだ……」


 ハウロスは荒く息をつく。


「触れていなくても変形ができたのか……?」


「どうした?余裕な口調が消えてるぜ。

 魔鋼は魔力が届く範囲なら直接触れなくても操れる。俺は生まれつき魔力制御が得意でな……三メートル圏内なら自在だ。」


「……なるほど。面白い。」


 怒りはある。だが、目は冷えている。


 グロウスは体に刺さった魔鋼を一本ずつ切り伏せる。


「だが、甘い。」


 踏み込み。


 殺気が一段階、重くなる。


 ハウロスは肩を押さえながら立ち上がり、周囲に魔力を巡らせる。


 複数の魔鋼が宙に浮かび、槍のように伸びる。


「うぉおお!」


 槍のような魔鋼がグラウスへ向かう。


 だが――


 グロウスの矛が唸り、空間ごと薙ぐような軌道で、すべてが断たれる。


 魔鋼は粉塵となって崩れ落ちた。


(やっぱり正面突破じゃ無理か……!)


 気づけばハウロスの目前に矛が振り上がる。


(ここまでか……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ