21.フィルスの昔話①
「フィルス、前に話してた昔の話を聞かせてよ。賢人ルドラの弟子だった時の」
「どうしたいきなり。」
「いや、嫌ならいいんだけど」
別に昔の話を聞きたかったわけじゃない。だが、何かフィルスと話をしておきたかったのだ。
「…まぁいいか。お前も知っていた方が良い話もある」
フィルスは少し考えたあと、カルマの顔を見てふーっとため息ついた。
「ルドラの話の前に、緋眼の魔人や神嶺の話は知っているか?」
「うん、なんとなく。緋眼の魔人は神嶺様が倒したけど復活したんでしょ?」
「簡単に言えばそうだが、緋眼の魔人をたおしたのは二代目神嶺シンセレーヌだ。」
「二代目なの?」
「ああ、初代神嶺は魔創神グランの側近ラルフだ、」
「その人はあんまり聞いたことがないけど有名じゃないの?」
「それは時代の問題だな。」
「時代?」
「初代神嶺ラルフはグランがグランダムを作ってから、各国が急成長した時代を生きた神嶺だ。
各国間でのいざこざや、戦争を止めたりと調停者としての役割を全うしたが、その時代には強力の魔獣や緋眼の魔人もいなかったからな。歴史的な偉業は残されていない。
そして、神嶺の力は二代目シンセレーヌへ継承され激動の時代を迎える。
緋眼の魔人率いる魔人軍の台頭だ。
緋眼の魔人とシンセレーヌとの戦いは約120年にも渡った。」
「え、そんなに長生きだったの?」
「二代目神嶺シンセレーヌは最高位の魔術によって不老だ。歳をとることも寿命で死ぬこともないそうだ。」
「そんな魔術があるのか…」
「そして神嶺シンセレーヌは魔人軍を壊滅させ、緋眼の魔人を追い詰める。一度目は魔力を封印したが、逃走される。その後、人類の村に隠れ潜んでいた緋眼の魔人を神聖剣で討伐したという。
それからしばらくの間、平和が訪れる。
だが、約30年前、緋眼の魔人が復活したという噂が出たのと同時に各地で魔人軍が暴れ始める。
特にその中で力を持っていたのが緋衣の十魔と呼ばれる10人の幹部の魔人だ。その強さは戦士でいうところの界級以上だという。」
「フィルスより強いってこと?」
「まぁ、相性もあるだろうが、天級の戦士一人じゃ厳しいだろうな。」
「神嶺のシンセレーヌはどうしたの?寿命で死ぬことはないんでしょ?」
「シンセレーヌは緋眼の魔人を討伐した約450年前以降、表舞台には現れていない。一説によれば神嶺の立ち位置を後継者に継承し剣を置いたそうだが、三代目神嶺は現れていないから信憑性は低いな。」
「じゃあどうするの…」
「そこで魔人軍に対抗したのが賢人ルドラだ。
ルドラは魔人軍の幹部十柱のうち、三柱を倒し魔人軍にとって立て直しが必要な程の打撃を与えたとされている。