13.剣と魔術と
次の日、カルマはまたフィルスに挑戦する。
「準備はいいか」
「うん」
カルマは剣を構え、フィルスに向かう。
(大きく踏み込んで……早く振る)
カルマは鋭く剣をなぎ払う…が、フィルスは既にカルマの剣の間合いから外れている。
2人の距離が少し遠のく。
カルマは剣から片手を離し、フィルスの方へ向けている。
「火の玉」
炎の玉がフィルスへ向かう。
「ふっ」
フィルスはニヤリと微笑むと空へ向けて飛び上がり炎の玉を避ける。
カルマが上空のフィルスを見上げるとフィルスがこちらへ向かってきていたため剣を構える。
が、しかしカルマは足元に違和感を覚え下を見てみると、カルマの足と周囲の地面が凍りついている。
「広範囲凍結」
「やべっ……」
気を取られていたことに気づいた時には既に遅くフィルスの剣がカルマを地面に叩きつける。
「がっ…」
カルマが目が覚めるとフィルスが目の前に座っていた。
「いてて…」
「あれでいい…」
「え?」
「私は剣術を教えるとは一言も言っていない。剣と魔術の両方を扱う戦士は稀だ。それは武器になる。
まだまだ甘い部分が多すぎるがな…」
そういうと今日もフィルスは去っていく。
カルマはダグラスが前に言っていたことを思い出した。
戦士には色々なスタイルがあるが、剣術と魔術を共に極めようと思うことは稀であると。
なぜなら"極められなくなる"からだそうだ。
剣術や魔術の階級は初級・中級・上級・天級・界級と続くが上級を超える戦士となるには、才能と長い時間剣術や魔術に打ち込む努力が必要となるのだという。
剣術と魔術のどちらも覚えようと思えば、どちらも中途半端になってしまうのだ。
だが、そんな中でフィルスは剣術・魔術共に天級なのだそうだ。
ダグラスはきっとカルマにはその才能があると見込んだのだろう。だからこそフィルスに師を頼んだのだ。
「そうか、生き残るためには剣も魔術も関係ないんだ」
カルマは立ち上がると明日に向けて自主練を始めた。
そこから修行の日々が始まる。カルマは毎日フィルスに叩きのめされ、そして度々襲ってくる魔獣を倒し、食料を探して徘徊した。
カルマはそんな環境の中で逞しく生き延びていた。
フィルスはどうやら魔術と剣で木の小屋を作って悠々自適に暮らしているようだった。
カルマは何度かフィルスの小屋に行ってみたが、「自分で作れ」と追い返された。




