14.記憶のこと①
カルマはラダの森に来てから毎晩、地面に横たわり夜空の星を眺めるのが日課になっていた。
なぜなら木々の間から見える夜空が今までに見たことがないほど綺麗だったからだ。
生まれてからカストリアを出たことはなかったので、街の外に出るとこんなに星が綺麗だったんだと気づいた。
そんな星空を見上げながらカルマは今日も眠りにつく。
……
気づけばカルマは夢の中。
今日も見るのはいつものあの回憶夢と呼ばれる夢。
いつものように女の人が自分に対して優しく笑いかける。
いつもと違っていたのはいつもはぼんやりとした意識の中だったが、今回はしっかりとした意識化にあり、視界もよく澄んでいる。
「いつもと違う……」
……!?
カルマは驚いた、心のなかで呟いたつもりが夢の中の自分がカルマの言葉を発したのだ。
いつもはただ毎回同じ夢を辿るだけのものだが、今回はしっかりと意識があり言葉を発することもできる。
「この夢はいったい何なんだ?」
……
「俺の記憶だよ」
「!?」
夢の中のカルマは声に驚き顔をあげると、いつもの夢の中の場所は消えていて、白く濁った世界に1人の俯いた男が立っている。
「君は誰?」
「俺はお前だ。」
「え…?」
「本当に覚えていないのか?」
「何のこと?」
「そうかやっぱりあそこに堕ちてしまったから」
「ちょっとよくわかんないよ。君は誰なの?」
「思い出してくれ……俺を」
そういうと男は顔をあげる。
……!?
カルマはその青年を見て驚く、
「僕と同じ顔……」
そう、そこにはカルマと同じ顔…正しくはカルマにそっくりなカルマより少し大人びた青年。
そして、その男もカルマ同様左目が緋眼である。
背丈や髪型、ほんの少し大人びた顔、よく見ると違いはあるが、カルマと同じと言っても過言ではなかった。
「思い出せ。お前は忘れている。」
「何を?」
「全てを」
「何で思い出さないといけないの?」
「おまえが運命を変えるために存在するからだ。」
「?」
「おまえは一体どこで生まれた??」
「カストリア…」
「カストリア?それがお前の知る真実か?」
「何が言いたいの?」
「お前は思い出す必要がある。"俺達"の為に…
確かに、その記憶は辛く苦しくそして長い、だが必要なんだ。
頼んだぞ……カルマ・ミラ・フィーラン……」
「はぁっ!」
カルマは目覚める。まるで悪夢から覚めたかのように。
「今のは一体…」
その後しばらく同じ夢を見ることはなかった…