131.雷魔術の極み
カルマは剣を構える。サリバンの速さは昼間の買い物でわかっていた。
カルマは足に魔力を溜める。応徳魔術〈神速〉にて、一瞬の攻撃を行う為だ。
「せいぃっ!」
カルマは足に溜めた魔力を一気に解放するように地面を蹴る。そして、サリバンに向かって一直線に移動し、剣先を勢いよく突き出す。
……
その速さは常識を遥かに逸脱する速さと言っても過言ではない。
瞬間的なスピードだけで言えば、他の天級戦士をも超えるだろう。
だが、カルマの目の前にサリバンの姿はなかった。
カルマが瞬時に移動したその動きよりも早く消えるように移動したのだ。
「ほっほ。確かに早いのぅ。」
サリバンはカルマの背後で腰に手を当てながら微笑んでいる。
サリバンの足にはバチバチと電流のようなものが流れている。
「それ、応徳魔術か?」
「これは雷系 上級基礎魔術 稲妻移動じゃ。」
「ライトニングフラッシュ?…話は聞いたことがあるけど、ここまでのスピードが出るものとは聞いたことがないよ?」
「これは稲妻移動を極め、極限までスピードを上げた改良型じゃ。」
「改良?」
「おぬしが扱う応徳魔術〈神速〉は魔力による身体能力を速力、いわゆる移動能力に特化して底上げしたものじゃ。じゃが、わしの稲妻移動は違う。この技は一瞬の瞬発的速さを大きく底上げしたものじゃ。継続使用をすることはできないが、戦いの中ではその一瞬に異次元の速度が必要となる時がある。
それを可能にするのがこの技じゃ。」
「一瞬の速さ……」
「小僧、おぬしの剣技は、力任せのパワータイプではないはずじゃ。魔術や剣術で相手の隙を作りつつ、その一瞬の隙をつく。そんな戦い方なのではないか?」
「うん…そうかも。」
「そんなおぬしにこの一瞬の爆発的なスピードは不要か?」
「いや、これがあれば俺の魔剣術は……あ、」
「ん?」
「それがわかっててアリディアさんは爺さんの元に向かわせたのか。」
「アリディアか、あやつはルドラの弟子達の中でも、気づきの良い子じゃったからのぉ。」
「だが、これでわかった。おれはこの3日で爺さんからその技の全てを盗む!」
「ふ…わしの半生に及ぶ集大成を3日で盗むとは…
大きく出たな小僧。さぁ来い!」
「おう!」
そこからカルマのサリバンへの挑戦が始まった。




