126.撤退
「うぅ……」
リアは目を覚まし、瓦礫に埋もれた体をゆっくりと動かす。
「一体どうなったの…みんなは……」
どのくらいの時間気を失っていたのだろうか。
周りを見渡すと近くにはグラールやセオドアが倒れ込んでいる。
「……!!」
リアはその奥で、1人クレアワームと戦うカルマの姿を見つける。
カルマは炎を纏った剣を振りながら、クレアワームの周囲を素早く移動している。
クレアワームの体にはカルマの魔剣フレイアでつけられた傷が無数にある。
しかし、カルマの体にも、無数の傷がついており、その傷周りかま毒によってところどころが変色している。
「カルマ!」
「リア!……大丈夫か?」
カルマは剣を振りながら、声をかけたリアの方を横目で見る。
「あなた……体が……」
「大丈夫。まだ動ける。それよりまだ召喚獣は使えるか?」
「うん。まだ魔力は残ってるから、使えるけど…」
「そしたら俺が合図したらみんなを連れてこの場を離れることのできる魔獣を出してくれ。」
「でも…クレアワームは……」
「大丈夫……もう少し。」
カルマはクレアワームから距離を置くと、手をクレアワームへ向ける。
「中級魔術 多連水矢」
複数の水の矢が勢いよくクレアワームに向かい、直撃する。
「ギイィ……」
クレアワームは身をよじらせると、そのまま地中へと逃げ込むように潜る。
「来た……!」
カルマは神速を使って、クレアワームが潜った場所へ瞬時に移動し、地面に手をつける。
「行けるか…?」
カルマは地面につけた右手に今ある魔力を集める。
「上級魔術 絶対零度!!」
カルマが魔術を発動した瞬間、周囲一体は白銀の氷の世界へと至る。地面は厚く冷たい氷が張り巡らされ。地面からは大きな水晶のような氷塊が突き出ている。
氷で蓋をされた地面の下でクレアワームがゴンゴンと体を打ち付ける音が聞こえる。
「リア!」
「うん!召喚 サンドグランキオ!」
リアが召喚したのは、黒く大きな蟹の魔獣。
「蟹……?」
「いいから早く乗って!」
カルマとリアは近くに倒れ込んでいたグラールやサジ、セオドアを連れ、蟹の背に乗る。
「進んで!サンドグランキオ!」
リアが大蟹に声をかけると、蟹は砂の上を横歩きで素早く移動し始める。
「早……」
「この子は砂漠に住む大蟹よ。砂の上での移動は慣れているわ。」
「はは…やるじゃん……うっ」
「カルマ!」
カルマは毒で変色した体を抑え、そのまま倒れ込んでしまう。慌てたリアの呼びかけが意識の中に溶けていく。




