122.砂漠の旅
魔車とは2頭のダチョウのような鳥型の魔獣が引く車の事だ。
二台の魔車が用意されており、一台の魔車にはアルバートと、補佐役の二名が。
もう一台には戦士隊が乗り込んだ。
アルバートの乗る魔車の方がよく見ると豪華である。
カルマは魔車に揺られながら、興味津々で初めて見る車や魔獣を観察する。
「この魔車の魔獣はヘリオサマナの召喚士の物なの?」
「私の魔獣よ。」
「え?」
「私は召喚術士よ。」
「えぇ!そうだったの?早く言ってよ。」
リアはカルマの反応に再びしわを寄せる。
「カルマが興味も持たず何も聞いてこないからでしょ」
「あ、はい。ごめんなさい。」
「おい、君。あの子に何かしたのか?」
剣士のサジがカルマにこっそりと声をかける。
「いや何かしたつもりないんだけど。なんか機嫌悪いんだよね。」
「そういえばリアさん。この間、カルマ君に任務で一緒になる事伝えに行ったのではなかったっけ?」
やりとりを見ていたグラールはリアに問いかける。
「はい。行きました。それに4度も。でも2日ともいなかったんですよ。療養日のはずなんですけどね。」
「あ〜……」
カルマはリアがそれを怒っていたことに今更気づくのであった。
リアの機嫌も時間と共に落ち着き、一行の魔車は砂漠を進む。
「流石に熱いな。皆、水分補給を忘れないようにね。」
日中の砂漠の気温に戦士達は項垂れている。
特にサジは鎧を身につけているので暑そうだ。
カルマは魔車の中央付近の床に手を向ける。
すると、そこに氷の柱を出現させる。
「おお…これはいい。」
「少しは冷えるでしょ?」
「よく思いつくわね。」
「ルードミリシオンに来る時もベルベスト山脈で炎魔術で何とか生き残れたからね。」
「え!?あんたベルベスト山脈を超えてきたの?」
「うん。そうだよ?」
「冗談でしょ?」
「でも、確かにミルズ王国の騒動の話から2ヶ月くらいしか経ってない気が…」
「だから本当だってば」
「カルマ君、君は本当に凄い子なのかもしれないね。
だが、この砂漠は急いで抜ける必要があったから、この氷魔術は助かるよ。」
「急いでいるんですか?」
「カルマ知らないの?この砂漠にはね。クレアワームっていう天級魔獣がいるのよ。」
「天級魔獣?」
「リアの言うとおり、その魔獣は夜になるとこのクレア砂漠に現れる魔獣でね。天級の戦士がいてようやく対処できるレベルなんだ。このパーティでは少し厳しいかもね。」
「それで夜までに砂漠を抜けないといけない?」
「そういうこと。」
(だからあんなに集合時間が早かったのか..)
「隊長!!」
前方で監視役を担っていたセオドアが焦った様子でグラールを呼ぶ。
「どうした?」
「前の魔車に異変です。あれは……」
「クレア砂漠の盗賊団か」
カルマも前方を見ると、アルバート達の魔車の行く道を塞ぐように剣を持った複数人の男達が立っている。
「みんな行くよ!」
戦士達はグラールの指示で魔車から飛び出す。




