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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
三章 戦士団ヘリオサマナ編
118/132

117.大森林


「ふっ」

 ラディールは笑みをこぼすとカルマから距離を取る。


「俺は何をそんなに悩んでいたんだろうな。

よく考えれば大したことじゃないと思えるなんて。

...お前に見せてやる。俺魔術の力を」


「ああ、真正面から受けてたってやる。」


樹木創叢(じゅもくそうそう)・大森林」


 ラディールの前に大きな巨木が何本も生えていき、まるで森林のように闘技場全体を埋め尽くしていく。

 とてつもない勢いでカルマに向かって森林は広がっていく。


「なんという物量…とんでもない魔術だな。」

 カルマはニヤリと笑う。


「だが、俺も負けられないんだ。打ち勝つには一点突破しかない。」


 カルマは剣を抜き炎を灯し、足に魔力を溜め、広がっていく森林に向かって走り出す。


「魔剣術 (つき) 帯炎滅突・神速」


 カルマが神速を使って走り出すと。周囲の木々はその炎で燃焼していく。


 だが、大森林の勢いも強く、カルマは深くなっていく木々に突入し、埋め尽くされ姿が見えなくなる。


「この魔術は現世の魔術の原点とも言える魔術だ。お前の応徳魔術では太刀打ちできないぞ!」


 ラディールは一層森を深く、カルマの道筋を断つ様に厚みを出していく。

 

 ラディールは手応えを感じる。森の木々がカルマの体を傷つけていく感触を…


「諦めろ!止まらねば全てを失うことになるぞ!」


「ボス……」「カルマ……!」

 ハウロスやカミルもカルマの無事を祈る。


 ラディールはピタリと森林の増殖を止める。

「……どうなった?」「終わったのか?」


 次の瞬間、ラディールの前の森からカルマが勢いよく飛び出す。その体は傷だらけで体中から出血している。


 カルマはそのまま剣を向けてラディールに突撃する。

ラディールはカルマの腕を掴み、抵抗するが、そのまま後ろに倒れ込む。


 カルマは倒れ込んだラディールを押さえつけ、剣を突きつける。


「なぜお前は諦めない。お前はこの模擬戦で何を望んでいる?」

 

「俺は魔人軍の手から家族を守ることができるくらい強い戦士になる。その為に、まずはお前達ヘリオサマナの連中を認めさせてやる!」


「ふ…強引なやつだな。」


 ラディールはカルマの腕を掴んでいた手を離し両手を頭の上にあげる。


「そこまで!!」

 ジーダの試合終了の合図が場内に反響しこだまする。

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