113.結界範囲
ハウロスは剣を振り上げ、マーズに向かって飛びかかる。
「ふっ、結界魔術を舐めすぎですよ!」
マーズは既に広域結界を解いており、自分の周りに範囲(area)結界を発動している。
「あれはさっきの反射の結界……?」
ハウロスは再びカルマとの会話を思い出す。
〈再び回想〉
「でも、その3種類の結界の特性だけならそこまで複雑ではなくないですか?ボスなら簡単に習得できそうですが…」
「いや、結界の種類の問題だけじゃないんだ。」
「と、いうと?」
「その結界にどういう魔術を付与するか。ここが基礎魔術であって基礎魔術ではないんだよ。結界魔術は…」
「魔術を付与?」
「例えば結界術にとても万能な魔術効果を付与したとする。そうだな…例えば"全ての攻撃を防ぐ"…とか」
「するとどうなるんですか?」
「結界魔術は魔術効果が広い程、結界は弱くなる。
全ての攻撃を防ぐ結界を張ったところですぐに結界は破られる。
逆に、"炎魔術のみを防ぐ結界"を張った場合、炎魔術に対しては無類の強さを見せる結界になる。」
「魔術効果が狭いから……?」
「その通り!」
〈回想終了〉
ハウロスはマーズの結界近くまで来ると剣を下ろす。
「……?」
「炎の玉」
ハウロスは普段使わない魔術を手から放つ。
「なに!?」
マーズは結界の中で驚いている。
「俺だって初級基礎魔術の一つくらい使えんだよ!」
「いや、でもまたはじかれるぞ……」
「いいや」
反射結界に弾かれることを指摘するクレインをカルマが否定する。
「今度は通る……」
ハウロスの火炎球はマーズの結界にはじかれることなく素通りし、マーズに直撃する。
「がっ……」
マーズは後方にはじけ飛ばされる。マーズが結界内から出たことで、マーズの結界は消滅する。
ハウロスは倒れ込んだマーズの上に飛び乗り、マーズの首にに魔鋼で作った剣を押し付ける。
「俺の魔術じゃ、大したダメージは与えられないからな。」
「そこまで!!」
ジーダが模擬戦の終了を叫ぶ。
ハウロスは剣の形を戻し立ち上がると、マーズに手を差し伸べる。
「よく、あの結界が"物理反射"だと気づきましたね。」
「物理反射か、魔鋼反射かはわからなかったんだけどな。どちらにしても魔術なら通ると思ったんだ。攻撃パターンが割れてる相手に対して、あえて結界の強度を下げることはしないと思ったからな。」
「なるほど……。結界魔術士の思考パターンを読まれたわけですね。参りました。完敗です。」
マーズは立ち上がり、ハウロスと固く握手をした。
「エイミーに続いてマーズまで……」
「こいつら本物か?」
「いやでも…次は天級のラディール」
ヘリオサマナの戦士達は唾を飲み込む。カルマリスタの予想外の実力に圧倒されたのだ。




