112.結界魔術
「僕の結界内にいる限り、君の魔力コントロールは扱えませんよ?」
「ちっ!」
ハウロスは結界から出るため、マーズから離れる様に走り出す。
しかし、マーズの結界はハウロスの動きに合わせて大きくなっていき、結界から出ることができない。
「この広域結界はまだまだ広げることができます。君に逃げ場はありません。」
ハウロスが躊躇していると、足に鎖の様なものが巻きつき動きを止める。
それはマーズが持つ武器から鎖のようなものが伸び、ハウロスの足に巻きついたのだ。
杖の先に伸び縮みする鎖と重りのついた連節棍棒のような武器だ。
マーズがフレイルを引くと、ハウロスの体は宙に浮き、そのまま地面にハウロスを叩きつける。
「がっ……」
「この結界内にいる限り、君に勝機はありませんよ!」
ハウロスはまたもや結界の端を目指して走り出す。
「何度やっても同じです」
マーズは結界を広げ、フレイルを使って攻撃していく。
ハウロスはその攻撃を避けながらも走り続けるが、結界はハウロスを逃すことなく広がっていく。
「やっぱり、ボスはすごいな……」
ハウロスは立ち止まる。
その手には魔鋼を変化させた剣を持っている。
「な、なぜ!?」
ハウロスは剣を持って今度はマーズに向かって走り出す。
「前にうちのボスに聞いたんだ。結界魔術のことを」
〈ハウロスの回想〉
ハウロスはミルズ王国にいる時に真剣に魔導書を読むカルマに声をかける。
「今度はなんの本を読んでらっしゃるんですか?」
「ん…結界魔術」
「今度は結界魔術を習得されるんですか?」
「いや、結界魔術は複雑でそう簡単に覚えられないから習得する気はないよ。」
「ではなぜ魔導書を?」
「覚えておいて損はないし。相手が使ってきた場合の対策もできるからね。」
「ボスは真面目ですね……それで、対応策はあるんですか?」
「結界魔術には3種類の種類がある。
部分(partial)結界・範囲(area)結界・広域(dome)結界、それぞれ結界範囲の違いがあるんだ。」
「と、いうことは広域(dome)結界が最も強力な結界なんですか?」
「いや、そうとも限らないんだよ。範囲が広い程、魔術の効果範囲は広いんだけど、必要魔力が多い。つまり、広げれば広げるだけ、魔術効力は薄く、弱くなっていく。」
「なるほど。」
「だから結界魔術にはまって抜け出せなくなったら、とにかく結界を広げて効力を薄める必要があるんだ。」
「でも、結局攻撃するには基本的に術者に近づかないと行けないですよね?」
「そう、だけど結界魔術にはある特性があるんだよ。」
「特性?」
「広げられるけど狭められない。魔鋼で魔力コントロールを日頃行う君ならわかるだろ?
魔力は込めることは簡単だけど、一度出した魔力を集めたり圧縮したりするのは簡単じゃない。」
「なるほど……」
〈回想終了〉
「お前は結界を薄く広げすぎた!」
ハウロスはマーズの攻撃を避けながら、マーズに接近する。




