110.炎の矢
カミルはエイミー早い攻撃を防ぎ続ける。
時折、エイミーの攻撃に合わせてカミルは刃を振り、攻撃を行ったが、エイミーは身軽にその攻撃を避けた。
そこからお互いの攻撃が空を切り続けた。
メラも近づくエイミーに炎を吐いて応戦したが、次の瞬間にはエイミーは移動している。
「あの至近距離で剣を振り続けているのにお互いに当たらないぞ……」
「なんという攻防……」
見ている戦士達は唖然とその戦いを見つめる。
「メラ!」
カミルがメラに合図を出すと、メラはエイミーに向かって大きな炎を吐く。
「キュアー!」
しかしエイミーには当たらない。
カミルはその隙に後ろに大きく後退し、エイミーと距離を取る。
そして、カミルは弓を構えると同時に三本の矢を射る。
「同時に三本!?」
しかし…エイミーはその矢を防御魔術で最も簡単に防ぐ。
「つまらないわね、矢の本数が増えただけなんて」
エイミーの冷たい視線が、さらに弓を引くカミルを見つめる。
カミルはエイミーに向かってもう一本の矢を強く引く。
「行くよメラ」
「キュッ!」
するとメラはカミルの構える双刃弓の上に乗り、前方に炎を吹き出す。
そしてカミルはその状態のまま、強く引いた矢を放つ。
「……!!」
カミルの矢は回転しながら、メラの炎を巻き取る様に進む。
「なっ……!?」
「あれは……」
炎を纏い高速回転するカミルの矢は、エイミーの防御魔術を突き破る。
「がはっ……」
エイミーは口から血を吹き、空中から徐々に地に落ちていく。その右胸には矢が突き立っている。
「エイミー!」
周りの戦士達が心配してエイミーに声をかけている。
「大丈夫……大したことない。」
地面に膝をつくエイミーの元にカミルは歩み寄る。
「どうする?まだ続けるか?」
「わざと致命傷を避けたわね?生かされて続けるつもりはないわ」
「ふ…これから仲間になろうと思っている相手を死に至らせる訳ないだろう?だけど、君も私の肩を引き裂いてくれたからね。これくらいはお返しさせてもらっていいだろうと思ってね。」
カミルはエイミーに手を差し伸べ、エイミーはカミルの手を掴み立ち上がる。
戦士達はその姿に拍手を送った。実力者であるエイミーを正面から打ち破ったカミルを認めたのだ。
カミルはカルマとハウロスの方へ向いて拳を向ける。
「あいつ、俺の真似したな…」
「ですね……炎の矢、面白い」
カミルとエイミーはそれぞれヘリオサマナの回復術士によって治癒を施されている。




