109.狩人の戦士
カミルは肩を切られ、地に膝をつき、傷口を押さえる。
肩にはじんわりと血が滲んでいる。
「くっ...」
「カミル…!」
「あれが上級剣士エイミーの力だ。移動速度に重点をおいた浮遊魔術と切れの良い長太刀による剣撃、そして敵の攻撃を防ぐ防御魔術……」
「移動、攻撃、防御、考え尽くされたスタイルということか。」
「ああ、そうしてエイミーはどんな相手や任務でも表情を変えずに淡々と敵を倒してきた。ついた通り名は能面のエイミー」
「能面のエイミー…だが..」
「どうした?」
「いや……うちのカミルもあのまま負けるたまじゃないよ」
「ふーっ」
カミルは大きく息を吐きながら、立ち上がり双刃弓を構える。
「ありがたいね。」
「……なんのこと?」
「私はミルズでの戦いで魔術を扱う剣士と戦った。
その剣士の魔術と剣術を巧みな攻撃に私は1人では手も足も出ず、そして意識を失った……。
そんな私にまた君みたいに魔術を駆使する強い剣士と戦うチャンスをくれたことにだよ。」
「つまらないわね。私はただ敵を倒す。それだけ。」
エイミーも剣を構える。
「召喚、炎獣メラ」
カミルはメラを召喚し、肩に乗せる。
「キュ!」
メラもいつになく臨戦体制である。
「あの子、召喚術を…?」
リアがカミルの召喚術を興味津々で見ている。
「メラ...?」
(メラは戦闘では対して役に立たないはずじゃ……)
エイミーは浮遊魔術で宙に浮きながら素早くカミルに向かって移動し、超速かつ連続の太刀筋でカミルに剣を振る。
「あちゃあ…あれだけ速いと避けるのも防ぐのも無理だな……」
「いや…」
「!?」
カミルはエイミーの連続の太刀をギリギリのところで防いでいる。
「あの攻撃が見えている…?」
「いや、全てを見切っている訳じゃない。半分は勘だよ。」
「勘?」
「カミルは会った時から勘の鋭いやつだった。殺気や視線…感覚的に攻撃を察知するんだ。」
「なんでそんなことができるんだ?」
「カミルは元々部族の出で、魔獣が山程いる森の中で育った。小さい頃から常に危険と隣り合わせだったはず。きっと生き残るために身についたんだよ。」
「元狩人の戦士..」
「世の中には色んな戦士がいるのね…」
「だけどそれだけじゃない。カミルは最近、必死に何かを身につけようとしていた…。
それがきっとカミルの新しい力になると俺は信じてる。」




