106.模擬戦
「俺の目は悪の魔人と同じ目をしている。だけど俺は魔人の手先でも、ましてや魔人本人でもない。
みんなと同じように人類の敵である魔人や魔人軍は俺の敵だ。だからこうしてアリディアさんの元へ来た。」
「信じられるか!この魔人が!!」
戦士の1人がカルマに罵声を浴びせる。
「ヌシらにとって"緋眼"というものは怒り…、恐怖…、あるいは悲しみ…そういう対象であることはわかっている。
じゃが、よく考えてみてくれ。
もし、君達が魔人とはなんら関係がないにも係わらず…緋眼として生まれてきたら……
どんな人生を歩むことになるか少し考えてみてくれ。」
「……」
アリディアの言葉に声を荒げていた戦士は俯く。
「私は……すごいと思う。その目を自分からさらけ出した勇気は認めるべき…なんじゃないかな……?」
リアが周りの戦士を諭すように話す。
「まぁ確かに、外見だけで判断するべきではないかもな……」
「実力くらいみてあげてもいいかもしれないな……」
戦士達の表情が少しずつ和らいでいく。
「ふっ……まぁ、わしも何も無条件で彼らと同盟を組むつもりはない。これから彼らには模擬戦にて力を見せてもらう。」
「模擬戦……」
「あの、アリディア様」
「なんじゃ?」
「理由…あと1つはなんですか?」
「あ、ああ忘れておったな……
わしがカストリアで8歳のカルマと会った時、わしは彼の未来を見た。」
「なっ……」
「アリディア様の予知……!」
「では彼が運命の…」
「いや、じゃが、見えたのはほんの一瞬だけじゃった…、その意味はわしにもわからん。
じゃが…彼はきっと何かの運命を持って生まれた子じゃとわしは思っておる。」
「アリディア様……」
「だからこそ、彼らにはここで力を示してもらう……。」
「まずは、1人目、カルマリスタのカミル・アラモ・シィン前へでよ。」
名前を呼ばれたカミルはゆっくりと前に出る。
「ぬしの相手は彼女じゃ。」
すると、1人の女戦士が、カミルの前に歩いてくる。
「彼女はエイミー、上級剣士じゃ。」
「エイミーが……?」「エイミーに勝てる訳がない……」
戦士達はまたざわつき出す。
「ハウロス・ミラ・ソルス、ぬしの相手は、彼じゃ。
降りてこい!マーズ!」
「はいっっ!」
アリディアの呼びかけに眼鏡をかけた男が降りてくる。
「今度はマーズか……」「厳しい試練だ。」
「最後にカルマ、ぬしの相手は……」
「アリディア様……!!」
とある者がアリディアに呼びかける。その者は戦士たちを掻き分けて前に現れる。
「どうした?ラディール」
「その者の相手、私にやらせてもらえないでしょうか。」
ラディールの思わぬ提案に戦士達がさらにざわつく。
「天級戦士が相手するわけにはいかないだろ……」
「なりたてとは言え天級、やつは何を言っているんだ……」
「……いいじゃろう。ではぬしに任せよう。」
アリディアは少し考えた後にすんなりと許可を出す。
「えっ……!?」「そんなバカな……」
「ありがとうございます……アリディア様」




