01.赤い瞳の子
この世界はどこか生きにくい..
いつからだろうそんな風に考えているのは..
彼は17歳高校2年の小林涼太
涼太が学校から帰宅すると、母は「おかえり。」と優しく微笑んだ。
涼太はあえて視線を逸らし、自室に向かって歩き出す。
母の少し困った様子に苛立ちがつのる。
母はとても優しかった。"異常なほど"に。
親バカといえばそれまでなのだが、涼太にはなぜかその優しさが鬱陶しく感じた。
反抗期というやつだろうか..。
涼太は小さい頃から周りの人に比べて何でもできた。
勉強も運動も優秀で、要領が良く、すぐに何でもできるようになった。
そんな涼太には、人とは違うある特徴があった。
それは生まれつき左目の瞳孔が赤いことだ。
母は心配し病院の先生に問題がないか何度も確認したそうだが、生まれつき色素に異常があるだけで、健康面に何ら影響はないのだそうだ。
この赤い瞳のことで同級生にからかわれたりすることもあったが、涼太は対して気にしなかった。
同じ年頃の子供達と比較して何でもできる涼太には周りの同級生がとてもちっぽけな存在に思えた。
そんな涼太に対して、同級生の一部の人が腹を立て、涼太を3人で囲んだ。
涼太に対し文句をつけ殴りかかったのだ。
だが、涼太は屈しなかった。殴りかかってきた同級生に対し真正面にむかいあった。
……
気づけば3人の同級生は地面に倒れうずくまっていた。
涼太は喧嘩も強かった。
涼太はやりすぎたと思いつつも、なぜか少し高揚していた。
その後すぐに先生が駆けつけ事情聴取を受けた。
涼太はただ淡々と因縁をつけられ殴りかかってきた事実とそれを返り討ちにしたことを伝える。
「お前は何をしたのかわかっているのか?」
「ただ黙って殴られればよかったんですか?」
「そうは言っていないが……やりすぎだと言っているんだ。」
担任の先生は深くため息をついた。
視線の先にはもう一人の先生がどこかに電話している。おそらく母親だろう。
その日は喧嘩を売ってきた同級生と互いに謝罪をし帰宅することになった。
涼太は自分は悪くないと思っていたが、これ以上長くなることも面倒だったので一言謝罪をした。
家に帰ると母が心配した様子で玄関で待っていた。
流石に怒られると涼太は思っていた。
「涼太、学校から連絡があったわ。怪我はない?」
「……何もない」
涼太がそう答えると母は緊張が解けたように笑顔を見せた。
「そう、それならよかった。早く着替えておいで。」
....
母は怒らなかった。
「……なんで?」
「え?」
「何で母さんは怒らないんだ。」
「涼太が無事だったならお母さんはそれでいいの。」
「そういうのが鬱陶しんだよ!!」
涼太は玄関を押し開け、外へ飛び出した。
母も焦ったように涼太を追おうとしている。
涼太は家を出て走った。なぜだかわからないがイライラが募っていた。
母は本当に涼太に対して優しかった。異常なほどに。そんな優しさが嫌だった。子供扱いされているような気分になった。
だが、少し走って気持ちが落ち着いてきたら、少し反省した。言いすぎたかもしれないと。
涼太は足を止め振り返った。
「帰ろう……」
その時だった。
振り返った視線の先には眩い光が近づいてくるのがわかった。
それは次第に大きくなっていく。
それはトラックのヘッドライトだった。
トラックは歩道に乗り上げ一直線に涼太に向かっていく。
「……!?」
気づけば涼太の体は宙をまっていた。
ぼんやりと薄れいく意識とは裏腹に思考は冴え渡っていた。
涼太はすぐに理解した。現在の全ての状況を……
途端に後悔した。
自分が死んだら母はどんな顔をするだろうか。
人生とは上手くいかないものだ、謝ることすらできないなんて……
はじめまして。MINMIと申します。
"結末から組み立てる小説"を意識して書きました!
「異常なほどに優しい母」「なぜか赤い瞳」
皆さんの隙間時間に 読み進めたいと思ってもらえるよう頑張ります!
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