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[第1話] 新しい日常の始まり

この世界の人類は、『術』と呼ばれる特別な力を使う。炎を出したり、超強いパンチを放ったりすることができるのが『術』だ。そんな『術』にもいろんな種類がある。1つ目は『魔術』。一番一般的な術で、専用の魔法陣と詠唱を使って色んな現象を起こせる術だ。2つ目は『武術』。魔術よりも使える人は少ないけど、それでも多くの人が使っている術で、己の身体一つで技を放つ術だ。3つ目は『精霊術』。魔術と武術と比べると使える人はすごく少ないけど、自分の周りにいるたくさんの精霊の力を借りて神聖な技を繰り出すすごい力だ。これらの術は、体を巡っている『魔力』というエネルギーを使って術を使うことができる。


でも、例外が一つだけ存在する。

それが『黒魔術』という術だ。この術は、時空の歪みから生まれた人類の敵対種、『バグ』と呼ばれる存在が使う。バグには魔力がない、だから、大気中にある魔力を使って黒魔術を行使するのだ。


バグは、人類を見つけたら見境なく襲ってくる。だからバグに襲われないために、街には魔術を使ったバリアが張られてるんだ。他にも、『討伐者』と呼ばれる人たちが、時々バリアの外に出てバグを倒してくれるんだ。


だから僕は、不思議でならない


「人類もバグも仲良くしたら、みんな幸せになれるのになぁ」





「アオー!あそぼー!」


 明るい少女の声が、すっかり高くなったお日様の下に響き渡る。今日もまた彼女と遊べるんだと、心を弾ませながらドアを開けると、そこには――


「ほら!はやくはやく!」


 お日様のように明るいオレンジ色の髪にもふもふな猫耳を生やし、お日様よりも明るい笑顔で笑う親友、アイ・ミールが待っていた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「明日からの学校、楽しみだな〜!」


 そういうアイは、その気持ちが抑えられないのか、公園の砂場で学校を作っていた。


「もう僕たちも6歳だもんね」


 この世界では、6歳から学校に通うことになっている。『術』を本格的に使い始めるので、アイがワクワクするのも無理はない。


「···ねぇ、アイも将来は、討伐者になるの?」


「え?」


 いきなりの質問に少し戸惑ったアイは、「ん〜」と唸り声を上げながら少し考えた後、


「私、討伐者は嫌かな。私たちもバグも、戦わずに仲良くすれば良いと思う」

 と、答えた。


「僕も、僕もそう思う!」


「お、アオもおんなじ?」


「うん!」


 バグという悪者と戦って世界の平和を守る、そんな討伐者の姿に、みんな憧れを持っている。

 童話や昔話も「邪悪なバグを倒した」「人類をバグの脅威から救った」なんてものがやまほどある。


 世の中の人にとって、僕たちの考えはあまり尊重されるものではないのだな、と思う。


 だけど······


「やっぱり、平和が一番だよ。人もバグも、死んじゃうのは嫌だな」


「そうだよね!どーかん!」


 僕たちは、そんな今の世の中の考え方を真っ向から否定する。

 死にたくない。死んでほしくない。


 それはきっと、バグも同じなんだ、と。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 翌日、すっきりと目を覚ますことができた。

 なんてったって今日は、学校に行く日!

 興奮収まらずベッドから飛び起き、速攻で着替えてドタドタとリビングへ向かう。


「あ、おはようアオ。ご飯できてるわよ」


 お母さんが作ってくれた朝ごはんのいい匂いが鼻の奥を抜ける。


 すると、


「ぐ〜」


 と、ついお腹が鳴ってしまった。


「ははは!母さんの料理は絶品だからな!腹がそれを欲してしまうのも無理はない!」


 お父さんがバカ笑いする。

 いつもお父さんはこんな感じだ。事あるごとに「ははは!」とバカ笑いをする。

 でも、それがお父さんのいいところだと思う。


「もう、バカなこと言ってないで。ほら、冷めないうちに食べちゃって」


「いただきまぁす!」


 すぐに席に着いた僕は、お母さんの絶品料理をガツガツと頬張る。


「ははは!いい食べっぷりだな!よーし父さんも!」


 横で張り合うかのように、お父さんも料理にかぶりつく。


「そんなに焦らなくても、料理は逃げて行かないわよ」


 お母さんが笑う。

 僕から見ても、お母さんはとても綺麗な人だと思う。お父さんも「6回も告白してやっと付き合うことができたんだぜ?」と言っていた。

 諦めが悪いのは、昔からのようだ。


「アオー!はやく学校行こー!」


「あら、アイちゃん早いわね」


 昨日「一緒に学校に行こう!」と約束していた時間よりも30分は早い。

 でも待ち切れない気持ちは僕も同じだった。

 

 朝ごはんを全部飲み込み、昨日のうちに準備しておいたカバンを手に取り、ドアを開ける。


「いってらっしゃい」「いってこい!」


 優しいお母さんと、力強いお父さんの声がかかる。

 そんな幸せを背中に感じながら――


「いってきます!!」


 新たな日々に胸を躍らせ、明るいお日様の下へと飛び出していった。

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