新天地、合流、それから駱駝
初エリアを踏破し、少しの設備を持った集落のような場所で友人と落ち合うことが出来た。
「ようやく集まれたし次エリア攻略と洒落込もうか」
「そうだね、行こうか!」
気合を込めながらエリアへと足を踏み入れる。ザリザリとした砂の上を歩みながら辺りを見回すだけでも、サソリやらバイソンやらがひしめき合ってどこへ向いたとしても何かしらのモンスターが目に入る。
「初期エリアにしてはなんか敵の数多くない?」
「最初の海岸でレベリング出来るし村の方でフレンドと合流できるからじゃない?」
なるほど、言われてみれば合点が行くがまだまだ軟弱なプレイヤーとしては辛いものだ。こいつは多少進めているらしいし壁...ではなく頼りにしながら進むとしよう。
少し歩くとこんなモンスターばかりの砂漠の中にただのラクダが呑気に歩いているのが見えた。普通の生き物も存在するのかと近づき、ペチペチラクダの腹辺りを叩く。感触もモデルも実にリアルである。そういえばと、気になっていた事を思い出した。
「このゲームって騎乗あんの?」
こういうゲームでどこまで自由にできるかは始める前から気になっていたんだ。色々と確かめるとしようか、まぁこれまでの戦闘を考えるに大分何でもできそうなものだが。
「当然あるよ 無理に乗っかって走らせることも出来るし、確かビーストテイマーのジョブを取れば自分用にカスタマイズも出来るんじゃなかったかな」
なるほど、それは面白い。こうなってくると何のジョブを取るかもかなり悩みどころだな。取り敢えずはここのエリアを抜けてからだからまだあとの話なのだが。思考中もずっと情報を語った男は先程から笑いを堪えきれず、と言わんばかりに笑いを漏らしている。
「何笑ってんだよ、そんなに基本情報なのか?」
「いや違うよ、まだ気付かないのが面白いなぁと思ってさ」
何を言っているのかがよくわからないが無理にでも乗ってみようかとラクダの方へと目を向けると、今にでも我が頭を噛みちぎらんとするラクダの愉快な顔面が間近へと迫っていた。
「おわぁ!?」
素っ頓狂な声を大音量を叫んでしまった。まさかこんなただのラクダがモンスターだとは想像もしないだろ普通。遠くのほうで地面を叩きながら大笑いしている友人は後で絶対にシメると決意をしながら、腰に着けた鞘から剣を全力で引き抜き目の前のラクダへと一撃を綺麗な太刀筋で斬りつける。感触が悪い、部位が悪かったか?大したダメージにはなってないな。地を蹴り少し後ろへと飛び下がり、次のラクダの攻撃を注視し攻撃タイミングを探そうとする。攻撃を仕掛けてくる様子はない、なんか誘発できそうな方法はと。
「どうしたァ?掛かってこいよ!」
口撃は効かないか、AIだし動物だもんなそりゃそうだ。全く動きが感じられないのでこちらから攻撃を切り出す。ラクダへと走り出すとようやくラクダは何かのモーションを取り始めた。背中のコブがボコボコと躍動し、何かを吐き出さんとチャージをしているようだな。普通のラクダから考えれば、そこには水が詰まっているはずだが、攻撃へと転用できるようなものではないはずだ。
「さては水じゃないな?何ため込んでるのかは知らないがさっさと叩き切ったほうが早いな!」
そんなモーションは意に介せずそのまま攻撃を打ち込む為、走り続ける。攻撃の間合いへと飛び込み首筋へと狙いを定め、剣を振りかぶろうとしたと同時に何かのチャージが完了したとでも言わんばかりにコブは音を止めた。まずい、何かはよく分からないが食らいたくはなさそうな攻撃をしようとしている。剣を首元へと突き立てようとしたと同時に、ラクダは強烈な火の玉を俺の腹部へと向けて勢いよく放出した。受ける訳にはいかないと剣の向きを変え、受ける形へと変えれはしたものの飛び出した攻撃の手は勢いを止めない。火球と衝突し炸裂するだろうという想定とは裏腹に、火球はまるでフルーツかのように寸断され、剣は炎を帯びる。
「切れるのかぁ!?なら、いい!」
剣の調子に違和感を感じながらも、切り裂いた勢いをそのままにラクダの顔面へと剣を叩き込む。元の狙いとは違ったが完璧な斬撃が顔面を切り裂き、ラクダの体は光の粒子となって消滅していく。なんか普通にキツかったな。戦闘の仕方ミスってるのか、まぁこれから慣れればいいか。さて、こっちでの戦闘を笑い終えてからこっちを見にせずにインベントリ整理にかまけている愚か者を締めにいこうか。