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ジュウトハチ ―少女舞闘綺伝―  作者: 柊 太郎


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カノントフミ その一

「……気づいて……いたんですね」

 大輔の言葉に才華(さいか)(うなず)く。

「半分は勘ですが、あと半分は論理的な考察の結果です……魔星を持つ者たちが、次々と引き寄せられるように貴方の元へ現れる……あれほど執拗に貴方を狙いながら、それでいて誰一人、けっして傷つけようとする者はいなかった……それに、十年前の出来事も符合します」

「だけど、十勇士と八犬士に加えて、百八魔星の頭領まで僕の体に宿ってるだなんて……」

「どれほど確率的にはありえない可能性であっても……もし、そう(・・)なのであれば、魔星たちが貴方を狙うのも納得がいきます」

「十勇士や八犬士の(かなめ)としての僕じゃなく、百八の魔星の(おさ)としての僕を狙っていた……そういうことなんですね?」

「……おそらくは……まだ、確実な証拠があるわけではありませんが」

 才華はそこで一度言葉を切った。


「もう一つ、気になることが」

「宋江の、能力(ちから)についてですね?」

 大輔の問いに、才華はすぐさま答えた。

「それについても、思い当たる(ふし)があります」

 才華は一呼吸置いて、再び話しだす。

「思えば宋江ほど不思議な人物はいません、自らは特に強いわけでも、飛び抜けた特技があるわけでもない、それでいて、民草からも、一騎当千の梁山泊の英雄たちからも、慕われ、敬われる、初めて会った者にすら」

「おそろしく強力な、天性の人間的魅力(カリスマ)……」

 と、大輔がつぶやく。

「そう、それこそが宋江の能力であると、私は考えます」

「じっ、実は、それに関して見せたいものが」

 大輔は立ち上がり、自分の通学用のバッグを手に取る。

「これを、見てください」

 大輔が自分のバッグから取り出したのは、厚い手紙の束だった。

 色とりどりの封筒と、宛名に書かれた飾り文字や可愛らしいシールなどから、中身を見ずともそれが何か、だいたいの想像がついた。

(しのぶ)さんが転校生として僕の学校に現れた日から、時々、こういう手紙を貰うようになったんです……そして、今日学校に行ったら、ついにこれだけの手紙が机や下駄箱に、あと、手紙だけじゃなくてスマホとか、もっとダイレクトなアプローチをしてくる人も」

 できうる限り表情には出さないように努力した才華だったが、それでも僅かに眉根が寄るのを抑えきれなかった。


「つまりは、女にモテるってのが能力ってこと!? そりゃ良いじゃん!」

 犬飼(いぬかい)(あきら)が吹き出し笑いながら言った。

 ひとしきり笑った後で、そこにいる他の面々が誰一人笑っていない事に気づき、(あきら)は真顔になる。

「……あれ? どしたの?」

 大輔と才華の会話の翌日、ここは十勇士と八犬士が作戦本部にしているマンションのリビングルーム。

 そこには清海(せいか)伊三美(いさみ)の三好姉妹と望月(もちづき)六花(りっか)犬塚(いぬづか)(しのぶ)犬川(いぬかわ)(そう)、そして犬飼(いぬかい)(あきら)の六人が集まっていた。

「大きすぎるんです」

 と、荘が現に言う。

「何がさ?」

「力が、です」

 今度は信が現に答えた。

「考えてもみなよ、全人類の約半分を、無条件で味方にできるんだよ? そりゃどいつもこいつも、目の色変えて欲しがるわけだ」

 と、伊三美が言う。

「その気んなれば、世界を支配することも、まんざら不可能じゃねーってことですね」

 ミントタブを口に放り込みながら六花が言った。

「世界中を争わせるなら、もっと簡単にできますねえ」

 清海がにこやかな顔で物騒な事を口にする。

「にしても、好意を持たれるのが、今のところ女からだけ、っつーのは何故なんだろうな」

 伊三美が頭に浮かんだ疑問を口にする。

「わかりません、元からそういった能力なのか、それともまだ成長の途上にあるのかも」

 と、荘が答えた。

「あーっ!」

 突然、現が大きな声を出す。

「何だよ急に」

 伊三美が耳を押さえながら現に尋ねる。

「真田大輔があらゆる女から無条件に好かれる、ってことは、あいつを手に入れれば、世界の半分が手に入るってことじやねえか!?」

「……うん、さっきからずっとその話をしてるんだけどね」

 伊三美がチベットスナギツネの表情(かお)で現にツッコむ。

「あのさー、(あきら)っちって、もしかして……」

 六花がひそひそと荘の耳元にささやく。

「ええ、少し……というか、かなり天然な所が」


「さて、ここでちょっと確認のため、ぶっちゃけとくか」

 伊三美が全員の顔を見回す。

「真田大輔に、はっきりと好意を持ってる人ー!」

 伊三美自身と清海、信と荘の手が挙がる。

「ふむ、やっぱりある程度、会ってからの期間の長さに影響されるみてーだな」

「まあ、あたしも第一印象は悪くなかったよ、まだちょっとしか話してないから、好きの嫌いのって段階じゃないけど」

 現に続いて六花も口を開く。

「あーしはまだ全然っすねー」

「信ちゃんはどう?」

「はい、お友達が増えたのは嬉しいです、すごく!」

「あ、そんな感じなんだ……委員長は?」

「委員長はやめてください……なんというか、天性の人の良さは感じますし……だから、私が抱いているのも……あくまで同胞としてのそれで……男女としての感情とは……」

「あーはいはい、長くなりそうだから一旦切るね……姉貴は?」

「私は大好き! ですよ、あと、姉貴ではなく、お姉様かお姉さん、せめてお姉ちゃんと呼びなさい」

「うーん、姉貴の場合は全人類をあまねく大好きだから、あまり参考にならねーんだよな……しっかし、となると、やっぱり一番は才蔵さんか……」

「えー、才蔵さん、そんなになんすかー?」

 六花が問う。

「あーうん、基本的にはキリッとしてんだけどさ、時々だだ漏れになる時があるんだよな、大ちゃんへの感情が、(はた)から見てて」

伊三(いさ)ちゃんも、気づいていたの?」

 清海が驚きの顔をする。

「そりゃ気づきもするよ、委員長もだろ?」

「あっ、ええ、見なかった事にしてきましたが、ちょっとリアクションに困るぐらいの時が」

「だよなぁ……でも、あたしは少し安心したよ、なんせあの人、何やらせてもミリの隙もなく完璧だから、せめて色恋沙汰ぐらいは少しポンコツなくらいの方が……」

「誰がポンコツだ?」

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