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亀を助けてはならない 〜浦島太郎裏話〜

昔々、あるところに浦島太郎という若者がおりました。

日々魚を釣り、人々に売って生計をたてておりました。


ある時、いつもの磯に行くと思ったように釣れません。

そこで船を借り、場所を移動することにしました。

違う島に上陸して歩いて行くと、何やら大声が聞こえます。

子どもたちのようです。

何かを囲んでワイワイガヤガヤ。

よく見ると大きな亀を取り囲んでいます。

「おーい、のろま!早く歩いてみろ」

「俺を乗せて歩け!」

「ひっくり返してみようぜ?」

無茶なことばかり言って、亀をいじめています。

たまらず浦島は子どもたちに声をかけました。

「こら!亀をいじめてはならん!あっちへ行きなさい!」

ちぇっと口を尖らせながら子どもたちはしぶしぶ村へと戻っていきました。

「かわいそうになあ、ケガはしていないか?早く海へ帰るといい」

亀はペコペコ頭を下げて、海へと帰っていきました。

「やれ、いいことをした。これなら釣れそうだな」

また少し歩いて、岩場に腰掛けた浦島は釣り糸をたれました。

ですが、ぜんぜん釣れません。

「これまでかな。帰るか」

帰ろうとしていたとき、海から声がします。

見れば波間に亀が顔を出しています。

「浦島さん。太郎さん。先ほどはありがとうございました」

どうやら子供たちから助けた亀のようです。

「いいや、どうしたんだい?」

「乙姫様からお礼をしたいと言われています。竜宮城へご案内いたします」

「それはそれは。今日は全然釣れなかったし。ありがたくお誘いにのろうか」

こうして浦島太郎は亀の背中に乗って、海の底へ旅立ちました。


それを確認した違う亀は、浜辺にあがりました。

子どもたちが囲みます。

ですが、いじめるためではありません。

「おーう、みんなお疲れ様。これ報酬な」

亀が甲羅の中から、小銭を出して子どもたちに握らせました。

「おい、幸吉!本当に甲羅に登るなよ。重たいじゃねえか」

「ご、ごめんなさい。さっきの兄ちゃん中々こっちにこないからさ。目立つようにと思って」

「次から気をつけろよ?」

は、はいと小さな声で男の子は答えた。

「じゃ、また男を釣れてくるわ。次もよろしくな」

はーいと子どもたちは元気よく答えた。

そう、浦島が助けた亀はこちら。

亀の見分けなどできるはずもないのです。

そして、亀は若い男を海へ連れて行く役目をもっていました。

龍宮城へ連れて行かれた男はというと。


海の仲間の踊りをみて踊って歌って。

ごちそうをたらふく食べての楽しい日々。

そして帰りたくなった男に乙姫様は玉手箱を渡しました。

「私を思い出したら開けてください」

再び亀の背中に乗り、浦島は村へ戻りました。

「ありがとうございました」

「こちらこそ助けていただきましたから。ではお元気で」

笑顔で手をふる浦島太郎。

ですが、自分の家が見当たりません。

途中、村人に聞くと聞いたこともない村の名前。

切なくなった浦島は、玉手箱のことを思い出しました。

「開けたらなにかわかるかも」

中からは、白い煙が出てきました。

そして、浦島はおじいさんになってしまいました。

「ああ、楽しかった日々はもしかしたら何百年も立っていたのかもしれない。もうこんな老いぼれ役にたたないなあ」

泣きながら浦島は浜辺に腰掛け、そしてそのまま動かなくなりました。


その様子を遠くから亀と乙姫が見ていました。

「お疲れ様、亀」

「今回もうまくいきましたな」

「人間てお人好しよね。寿命をほとんどいただいたわ」

「目が節穴の男が長生きするよりも乙姫様が美しく長生きしていただいたほうがよろしいかと思います」

「ほほほ。助けた亀が違うことも自分の住んでいた場所の区別もできないのですものね。わたくしの美と命に使わせてもらうわ」

浦島太郎が住んでいた島は、隣の島。

この島はとても良く似ている違う島だった。

「なぜ送ってもらう島は、元と同じ場所だと思っているのか。いやはや、人間の思い込みとは毎度驚かされる」


そして今日もまた、どこかの島の浜辺で亀がいじめられている。

だが、決して亀を助けてはならない。


− 終わり−

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