顔の癌で惨めに死んだ者 QUI PER INFIRMITATEM FACIE CANCERATA MALE OBIIT ITA UT MORS
【↑この詩タイトルは、カルタゴで殉死したペルペトゥアのラテン語テキストの一部から抜粋したものです】
◇Ⅰ
ああ、歪な潰瘍を身に抱えながら、
我らは、かつて
キリストが歩んだ路地裏を歩く。
華やかさや、美徳!!
そういったものに焦がれ、軽蔑し、
いずれにせよ人生に嘔吐しながら、
我らは銃口を突き付けられ、
鉄を打つ、嘆きの鍛冶屋だ!!
なぜ、誤解した?
あの鶉は自由に羽ばたけると?
身をかがめて、低い地面の上を生きるこの世界で
兵站なしに
天上の道を歩める者などいない。
それでも、お前が他者の光に怯え、
羨み、嗚咽し、軽蔑するのなら、
どうか、この悲惨なファドを歌い、
キリストを貫いた槍で私を殺してくれ。
ああ、我は、
顔の癌で惨めに死んだ者。
己の痛みだけを知り、寒さに震え、
実体的な線虫の数式を解く者。
崇高さの残渣に縋り、
地上の楽園を探す者。
◇Ⅱ
ああ、病で死んだ者の屍衣を剥ぎ取り、
己の身を暖める様な
後ろめたさだけを背負い、
十字架に焦がれたフリをする
我は夜に海藻を漁る漁師。
腸を抜き取られた骸に詩を入れても
神の真似事は出来ぬ。
風土病に犯され人生に嗚咽しながら、
残された人生の時間で、
疫学的に偽善を語る鶏病の医師よ。
なぜ、笑ってしまったのだ?
この悲惨さも、残酷さも。
魔法も使えず、人形に閉じ込められ、
男共が描く宿命の女を演じる者など木彫りだ!!
それでも、お前が真理に怯え、
逃亡し、目隠しし、侮辱するのなら、
私は突き付けてやろう。
神よりも冷たい言葉と炎で。
ああ、我は、
顔の癌で惨めに死んだ者。
己の血をよく知り、甘さを蔑み、
強がる者の悲鳴を喜ぶ者。
蟹の死骸を竈で燃やし、
その灰で楽園を示す者。
◇
それでも、何一つ癒えぬ世界に
生まれてきた覚悟は出来ているか?
受肉しても愚者にならぬ男に焦がれ、
害虫の様に他者を殺し、
実体を伴った悲惨に苦しめられ、
骨も折られ、心臓を掴まれる。
それでも聖者になれぬ灰だらけの黒い臓物を抱え、
深夜、誰にも知られずに咳き込みながら
我々はファドを歌う。
その意味ときたら・・・?
そう、その意味ときたら、実に滑稽で
罪人も、聖人も、凡人も、偽善者も・・
己が癌を患っている事を
ほんの束の間だけ忘れられるのだ。