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マエがある!  作者: ヒロエ凹道
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p...追い剝ぎ




p...追い剝ぎ それは゛人間 ゛の追い剝ぎだ。それは斬りつけてダメージを与える。それはいくつかの゛低品質の ゛ダメージを与える。



>>追い剝ぎは死んだ。「なんて1日だ……」追い剝ぎの死体を拾った。追い剝ぎの死体を拾った。...


山を下りる途中、道はずれから刃物を構えた2人組が現れて「おい待て」と立ちはだかったので、ゴトーは物も言わずに棍棒を振り下ろした。


「かに゛っ!」


山刀を持った男は手ぶらのゴトーの手から突如現れた凶器に反応出来なかった。

彼は脳天を打たれ、急に服だけになったように、くたくたと崩れ落ちた。何を言おうとしたのかは分からずじまいだ。


「な、なにすんだお前、卑怯だぞ!」

「そういうのに興味はない」


横にいた男は顔を引きつらせ、不意討ちに非難の言葉を投げつけるものの、ゴトーがあっさりと言い放つと、手に持ったちっぽけなナイフとゴトーの棍棒を悲し気に見比べた。

ナイフ男はすぐにくの字に折れ曲がる事になった。


「強盗だ。金を出せ」



ゴトーは手に持った棍棒を雑に放り投げると、2つの死体を茂みの奥に運んだ。

それは得物を咥え去る獣の習性にも似て、戦利品を他人の目から隠すという点においては犯罪者と共通の行為だ。


>>ナイフを拾った。山刀を拾った。


日本以外なら、どう考えても正当防衛だったと思うので、何もこんな事をする必要はないはずである。けれどゴトーは詮索される面倒は避けたいし、彼らの持ってた金品も欲しい。


>>追い剝ぎの死体を漁った。...財布を拾った。皮のブーツを拾った。...とてつもなく臭い!ゴトーは皮のブーツを投げた。


財布らしき皮袋には効果が詰まっていたが、これがどの位の価値を持つのかは判断が付かない。

まあ、どこでも普通、強盗は貧乏人のする事だ。あまり期待は出来ない。


気になったのは(しるし)の付けられた地図だが、ゴトーはとりあえず後回しにした。今はとにかく、


「金はあっても買い物に行く服がない」


という状態だ。なのでまずは服だ。

おそらくここでも平均以下ではあろう、剥ぎ取った衣服は普段なら雑巾にする、そんな代物だ。


これに比べればゴトーの「ぬののふく」は高級品扱いだろう。ゲームなんかで所持していれば、真っ先に売り払って装備を整えるような。

ちょっと撫でてみようと追い剝ぎが寄ってきたくらいだ。現地住民との初遭遇には相応しくない気がする。


この考えはおそらく正しい。しかしゴトーは追い剥ぎとの遭遇が真の「初遭遇」だったとは気づかなかった。


――「追い剝ぎ」はどの時点で「追い剝ぎ」なんだ?常習犯か、犯行の意思を持った段階か?それとも実行に移したその都度か……?


そんな事を考えていたので、「ついにやった」と思いはしても、゛現地の人間゛という発想は湧かなかった。「敵」を擬人化するのはゴトーには難しい。


手こずりはしたものの、死者の尊厳を守るのは、もう下着一枚残すだけになった。これは単にゴトーが履きたくなかったからだ。皮膚病の厄介さは受刑中にこの足裏が覚えている。


奪ったその他の衣服に乾いた砂を掛け、それをばたばたと振る。

埃っぽくはなったものの、ノミやダニの心配が少しは減ったと思いたい。

匂いは――すぐに鼻が慣れるだろう。


>>ゴトーの【あさましきわざ】...棍棒を取り出した。


追い剝ぎに対する不意討ちは、その存在に気付いた時から備えられていた。

気付いたといっても、猟師でもないゴトーが山の中で生き物の気配を嗅ぎ取れるわけがなく、嗅ぎ取ったのは単純に匂いだった。


1週間以上は風呂に入っていないような男達の匂いがプンと匂い、しばらく続いたのだ。呆れた事に風上にいたらしい。


ゴトーは棍棒を邪魔そうに投げ捨て、彼らの油断を誘った。

転生ものによくあるように、【あさましきわざ】は荷物を収納したりは出来なかったが、遠くの物を「取り出す」事が出来た。


手ぶらだった事が追い剝ぎの襲撃を誘ったのかもしれないが、そうではないかもしれない。そこはゴトーには関係の無い事だった。


着替え終ると、ゴトーの姿は奇妙な異邦人から、棍棒に予備の衣服を括りつけた、埃じみた男に変わった。胡乱さという点では似たようなものではある。


しかし明らかなよそ者は、いきなり襲われやすい。

悪党は自分と同じ回想の人間を、前触れなく襲ったりはしない。魚のように一度突つき、食べられそうだと確かめてから食い付く。色で仲間と思う事すらある。

だから着替える前より治安に関する危険は減ったはずである。


――それに差し出せる財布まである。

それを思えば武器を持つのもどうかと思った。どうせ奪ったものなわけで、半分はどこかに「捨てて」おけば、盗られる心配もない。


「確かに『あさましい』な……」


めっきり増えた自覚から、普段は我慢している独り言が思わず口を突いた。こういう時は大抵が負の感情から零れる。あまり良いものではない。


脱力感を感じながら、ゴトーは麓へと向かった。








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