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部屋でのお話

作者: 優華

 時刻は二時。

 カーテンを一枚隔てて入ってくるのは人工的な光。六畳のこの部屋を薄く月明かりのごとく照らす。

 そんな部屋の隅に敷いた布団の上で俺はあおむけに寝転がっている。闇に慣れた目は天井の存在を確かに認めているが、俺にはどうも脳が見せている幻覚に見えて仕方がない。

 どうやら脳は俺を騙そうとしているらしい。

 脳は俺に目を閉じよと命じてくる。俺の体は素直に応じるしかなかった。


 さあ、ここからは脳の独擅場!俺は脳の生み出した感覚に翻弄され続けるしかない。


 まず感じたのは誰かに乗られている感覚。乗られているというより抱き着かれていると言った方が近いかもしれない。感じる重さは軽く、華奢で、柔らかく、俺よりひとまわり小さい。相手が服を身にまとっている感覚がなく、裸体であると察する。

 これは少女だ、と脳が告げる。

 少年の可能性も捨てきれないが、この柔らかさは女であると本能が同意したため少女だと決めた。そう感じたほうが幸せだろう。

 着慣れたパジャマ越しに感じる彼女の体温は俺より幾分か高く、そのぬくもりが全身の血行を促進する。

 彼女はおもむろに腹這いで俺の上を移動し顔を俺の目と鼻の先に持ってきた。目はまだ開けていないが、頬を撫でる少女の髪がそう考えさせた。這ったせいで俺の服が臍まで捲れ、腹が彼女の素肌に触れる。その肌のなめらかな感触が俺の拍動を乱した。

 今、目を開ければ彼女の顔が見えるだろう。でもそれは脳が許さない。

 禁止されたことが想像力を掻き立てる。想像する。濡れ羽色の髪。それとは対照的な白い肌。優し気な印象を与える眉。部屋の黒に紛れる双眸。すっと通った鼻。薄紅の唇。そのすべてが部屋に入る光で微かに照らされているのだろう。


 どうするべきだろうか。ふと、冷静になる。


 これは脳が作り出した幻想であって現実にはないもの。今の俺の上には虚無が広がっているだけだ。しかし、この感覚は本物であると、遺伝子が告げる。

 じゃあ、この感覚はなんだ。化け物か。ついに夢想が具現化したのか。

 目が開けられないのだから確かめようがない。五感のうちの一つが失われたということは残り四つを頼るしかない。

 嗅覚は先ほどから仕事をしていない。彼女には匂いがないのだろうか。そもそも脳が生み出したものに匂いなんてあるのだろうか。

 聴覚は俺の心臓の音を捉えることに終始している。

 味覚はさすがになしだ。

 最後は触覚。こいつが唯一の頼りだ。

 

 大丈夫だ。こいつは贋物だ。触ったって文句は言わないさ。


 悪魔は囁く。天使は沈黙したままだった。

 決行だ。

 

 俺は右手を動かし、おそるおそる彼女に触れる。第一目標は唯一触れることのできている彼女の腹。

 指を動かして彼女の腹と俺の腹の間に滑り込ませる。確かに感じる生命のぬくもり。手の甲で感じた彼女の臍が俺の嗜虐心をゆすった。柔らかな肌が俺の手を圧迫する。手のひら側にある俺の腹は彼女の腹と比較するとサバンナのようだ。

 次は左手の出番。彼女を抱き込むように背中に手を回す。途端、吐息が漏れる。その大気の流動を耳が感じる。

 俺の心臓が跳ねた。

 俺は確かに感じたのだ。生命を。紛れもない本物だ。間違うはずがない。少女は呼吸をしている。


 彼女を孕ませよ。と脳が告げる。本能も同様にだ。

 

 冷静な思考は考える。俺は翻弄されている。脳が作り出した幻想に。これは偽物だ。そもそもこの状況はおかしいではないか。

 感覚はありのままを伝える。状況はありえなくとも、これは現実であると。


 こんな問答を無駄にする一つの手段がある。目を開くことだ。


 脳に抗う。瞼は動こうとしない。

 ふと、脳が問う。現実が見たいか、と。

 答えなんて決まっていた。

 

 瞼が開いた。


 そこに広がっていたのは天井だった。少女なんていなかった。

 夢かと思ったがそんなこともない。時計は二時を示したままだ。そもそもそんな時間などどこにもなかったのだ。

 寝てしまおうと思ったが、目は冴えきってしまっていた。当分寝れそうもない。

 俺は立ち上がり、カーテンを開ける。

 窓から見えるのは無機質な人工の光によって映し出された町。星なんて見えない。季節を告げる自然もなく、ただただ人の営みが時を告げる。

 そんな人類ももういない。全員消えた。僕だけを残して。

 いいや。消されたという表現が正しい。突如として俺の目の前に現れた一人の男によって。


 ”弥終の幽”彼はそう名乗った。

「なぜ俺だけを残した?」俺は彼にそう問うた。

 彼はこう答える。

「この星に蔓延った知的生命体のなかで君だけが異色だった。世界は君を軸に回るべきだった。正確には君の脳だけどね。」

 俺の脳は理解を拒む。

 続けて彼はこう言った。

「君の脳はこの星の未来を変えるほどの力をもっている。でも、今のままじゃその力は発揮されない。そうして何もせぬまま君が死ぬ。それが我々の唯一の懸念だった。だから早めに手を打った。それでは私はもう行くことにするよ。あとは君次第だ。」


「残念だよ。君は千載一遇のチャンスを逃したんだ。アダムとイブ。君にとっては魅力的ではなかったのかなぁ。」


 今日をもって人類種はその長い長い栄華に終止符を打った。

人のお腹って触ると気持ちよくってよく眠れるんですよ。私は小さい頃からの癖で自分の腹もよく触っちゃうので小説として形にしてみました。

右も左も文法もわからない人間の書いたなので読みづらいと思いますが、ただの自己満足が誰かの暇つぶしになるのならそれもいいかなと思います。

恥ずかしいけどね(/ω\)

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