これからのこと
夜遅い時間になった。
お昼にミスティさんに占ってもらってからというもの、いまだに心の奥がむずむずと騒がしい状態の私は、クッションの上でだらーんとしていたリュリュちゃんを抱えてソファに寝転ぶ。
「い、いきなりどうしたのりゅ」
リュリュちゃんが困惑した顔で聞いてくる。
「リュリュちゃん、占いって本当に当たるんだね」
「……占いに行ってきたりゅ?」
「うん、実はお昼に行ってきた。私の過去と現在のこと、ぜーんぶ当てられちゃったよ」
もふもふしながら私は答える。
「それはすごい占い師さんだりゅ」
「そうなの、すごかったの。私もあんな占い師になりたいなあ」
私はミスティさんのことを思い出しながら、物思いにふける。
「ミスティさん、ほんと素敵だったなあ」
美人でやさしくて笑顔がかわいくて、占いが当たりまくってて。
新米占い師の私が言うのもなんだけど、まさに非のうちどころのない占い師だった。
今後の仕事についてですけど、占いによれば開業をしても問題はなさそうです。
ただ、ラビットホビットのカードには『移動』の意味が含まれています。つまり王都ではなく、どこか別の土地で開業したほうが、さらに上手くいくと予想できます。
移動、すなわちお引越しするとなると、新たな土地で人間関係をはじめから再構築する必要はでてきますね。また、生活もこれまでと大きく変わります。
それに適応するのは大変でしょうけど、新たな土地で開業をすると、幸福な日々を迎えられることでしょう。
私の今後のことについて、ミスティさんはこのように告げた。
正直に言って、ミスティさんの占いによって私は驚くほどに自信がついた。悩みが嘘みたいに完全に吹っ切れて、未来へと進む勇気が湧いた。占いのすごさを改めて思い知った。
占いの資料に、『占いはときに悩んでいる人の力になり、勇気になり、未来になります』と書いてあって、大げさだなあなんて思っていたけど、あれは本当だったんだと実感した。
これまでずっと情熱を注いできた、踊り子という職業。
その踊り子を不本意ながら辞めることになって、なんとなく占い師になって、それなりに熱中して。
そしていま、私は占いに、占い師という職業に、心から惚れ込んでしまった。
もう私は迷わない。これからずっと、私は占い師として生きていく。
こう決心がついてようやく、私は心から占い師になれた気がした。
そうだ。これからのこと、寝る前にリュリュちゃんに伝えておくか。
「リュリュちゃん、ちょっと聞いてくれる?」
「りゅ?」
リュリュちゃんが私をじっと見つめてきた。
「私、王都から出るよ。準備が整い次第、明日にでも出ていく。王都を出て、どこか新しい土地で占い師としてお店を開くから。だからさ、よかったらリュリュちゃんも一緒についてきてくれない?」
「ご主人様が水晶玉を手放さない限り、リュリュはご主人様にずっとついていくりゅ」
「ありがとね。私、絶対に手放さないから。だからずっと一緒だよ」
そう言って私はリュリュちゃんの頭をなでる。
「さーて、そうと決まればさっそく準備だ。はじめるぞー」
私は両頬を叩いて、気合いを入れた。




