占いの勉強はじめました
神殿で占い師の転職手続きをした次の日。
私は神殿のおねえさんからもらった占いに関する資料を貪るように読みふけっていた。
「水晶占いは、天気や作物の出来をはかる重要な占いとして、幅広い需要があります。また水晶占いでは、恋愛運や職業運、魔物の気持ちなど、様々な分野を知ることができます、ねえ。なるほどなるほど」
占いには、水晶占い、星座占い、魔物占い、夢占い、カード占い、ストーン占い、花占い、アイテム占い、手相占い、人相占い、家相占い、などなど、様々な占い方があるらしい。
資料のはじめのページあたりにそう書いてあった。
最終的にはどの方法でも満遍なく占えるようになっておいた方がお客さんのいろんな要望にも応えられるからいいのかな、と思う。
でも初めのうちは、占いにおける強みを一つだけでも作ることが大事なんじゃないかと思っている。
踊り子時代の私が、三日月を表現したクレセントムーンダンスを極めてから一気に活躍の場が広がったように。
占い師においてもそこは変わらないはずだ。
私はこの占いが得意です、と堂々と言えるようになっておけば、その占い目当てで私のとこにやってきてくれるお客さんが現れるはずだ。
ということで、まずは一点集中して水晶占いを覚えることにしたのだ。
私は黙々と資料を読んでいく。
まずは精神を集中させます。
しっかりと集中できたら、水晶玉を見ます。そして球体に映る色や陰影をチェックしていきます。
水晶玉には人や物などのはっきりした姿形ではなく、色や陰影が映し出されます。そこに現れた陰影を元に、答えを見つけていきます。
占いは魔法ではないので魔力とは関係ありません。占いとは、いわば能力です。見えないモノを信じ抜く能力があれば、水晶玉に『答え』がぼんやりと浮かんできます。
明日へと向かうヒントを知らせてくれたり、迷いを断ち切ってくれる古きよき神秘的な占い、それが水晶占いです。
「はあぁ、古きよき神秘的な占い、かあ……」
資料を読んで感嘆とした声を漏らす。
ほら、水晶占いってやっぱり占い師の憧れというかなんというか、カッコイイよね。水晶玉に手をかざして見てる姿って、すごく占い師っぽいよね。これはきっと私だけの勝手なイメージではないはず。
「あー! 早く水晶占いやってみたいー!」
腰を痛めないようにベッドで仰向けに寝転びながら資料を読んでいた私は、水晶占いをやりたい衝動に駆られてしまい思わず両足をジタバタとさせる。
こういうのは習うより慣れろ、だよね。
資料読むよりやってみることが大事だよ。
ふと、窓の外を見る。
まだお昼過ぎの時間だ。
「そうだ、水晶玉買ってこよう」
寝巻きを脱いで外に出かけるための私服にチェンジした。




