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腰をやってしまった

 二十二歳、アルテア・スカーレット、独身。

 職業は、踊り子。

 踊るためだけに、人生を捧げてきた。

 時を忘れて、我を忘れて、無我夢中でひたすら踊ってきた。


 みんなに笑顔を届けるために、多少は無茶をしながらも踊ってきた。

 そんな感じで生きていたら、今日のお昼、踊りの稽古中に腰が急に痛くなって立っていられなくなってしまった。



「私、もうだめなんですね……」


 ぽつりとつぶやく。


 いま私の目の前には、若い女性治癒術師の先生がいる。先生は白いコートを羽織っている。私はベッドで寝かされているため、先生から見下ろされている格好だ。


「はい。あなたは踊りすぎて見事に腰をやってしまいました。日常生活は問題なく送れますが、踊り子としては再起不能です。私の治癒術をもってしても完治しません。希望と才能のある若者だったのに、実に残念でなりません……ううっ」


 先生は私のために泣いてくれた。そのやさしさが心にしみる。


「私の踊り子人生、終わっちゃったなあ」


「アルテアさんの踊りが見れなくなって、悲しむ人がたくさん出てきそうですね」


「そうなるといいなあ」


 照明のついたきらびやかなダンスステージから私が消えた未来を考えてみようとした。

 でもやっぱり踊らなくなったあとのことは、そう簡単には想像できなかった。


「まずは約三十日間、この治癒院に入院して、歩けるまでに回復することを目指しましょう」


 先生の言葉に、私はうなずく。


「あ、ちなみに踊り子以外でやってみたい職業はありますか?」


 先生が職業について聞いてきた。

 その質問から、私はもう踊り子じゃいられなくなるんだということを改めて実感する。


「うーん、いまはこれといってないですね」

 

「なるほど。では、腰の痛みがひいたら転職のために神殿に行くことをおすすめします。そこで自分に合う職業を探すといいでしょう」


 神殿を案内された。神殿では職業のとりまとめ的な総合案内をしていて、ありとあらゆる職業に転職できるすべを持っている、と昔に誰かから聞いたことがある。


「ありがとうございます。腰がよくなったら神殿にいってみます」


「いえいえ。一日でも早く治癒院を出られるように、全力で回復のサポートをしますね!」


 先生はそう言うと、両手をぐっと握った。



 これまでたくさん踊った。やりたいことはやってきた。

 こんなかたちで急に終わってしまったけれど、第一の人生に悔いはない。


 まあ、とりあえずは神殿で、第二の人生をスタートさせますか!

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