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危機的状況その2

十万字突破!

これからも、よろしくお願いします!

 065





「クラハ……どこにいる?」


 浮遊魔法を解除して、道のない道を進む。

 思ったより、森が深いな……外から見たらきれいな平野だった気がしたんだが。


 ライル……! ライル!


 不意にどこからか、ライルを呼ぶ声がした。


「!? クロヒ……!?」


 クロヒもここにいるのか? でもなんで……?


 《周辺感知》


 深い森を、ずっと奥へ進むと、少し開けた場所がある。そこから、大きな魔力をいくつか感じる。

 そこか。この距離なら、あと少しでつく!


 《浮遊・突進》


 再び、浮遊魔法を発動させて、目的地に向けて、一直線にとんで行く。






 数分後……



『まずいのぅ。ライルを連れに行っても間に合わないじゃろう……とりあえず、連絡を……! ライル! どこにいる?今すぐ来て貰いたいんじゃ!』


 何だよ、クラハ。これでも聞こえるだろ?

 ライルは既に、クラハの隣で、クロヒの様子をうかがっていた。


『いつの間に……』


 とっくに来てたし。で、どうすんだよこの状況。クラハ、お前が緊張して、落ち着きを失くすほどの状況なのか? 俺にはそうは思えないが……


『ちょっと、焦っていたんじゃ……落ち着ける』


 で、俺が突っ込んでいっても良いんだが……それだと、深鈴を助けられないどころか、逆に俺がやられるよな。どうしよう。


『そうだな、ライル、これは最後の特訓と言うことにするのじゃ。お前は、クロヒの洗脳を解き、わらわが、あの女神を止める。いいかの?』


 別に構わないが……それじゃあ、クラハの分が悪いんじゃ……


『構わん。これまでわらわが迷惑をかけてきた……これは恩返しじゃ。にいさん、クロヒへの。これが終わったら、ダンジョンでもどこへでも連れていってやるからの!』


 そう言うと、小さな身体を静かに動かして、物陰に身を隠しながら、行ってしまった。

 あ、ちょっと! 俺まだ何も言ってないんだけど。……まぁ、やるか。でも、洗脳を解くって、どうすればいいんだ?


 《浮遊》


 そう考えながらも、音を立てないように、浮遊魔法を発動させた。

 近くに行って、簡単なことして、戻るとか、そう言うのであってほしいところだが。

 ライルは、クラハが女神の近くに行ったのを見計らって、クロヒの背後に移動した。


『おい! 女神とやら! わらわが相手になろう!』


 そう言った、クラハはいつもよりもかっこ良く見えた。


「ケケケッ、早速かぁ? ノコノコと出てきたってことは、殺されに来たのかな?」


『く、クラ、ハ! だめ、だ! お前じゃ……!』


 クロヒが、途切れ途切れになりながらも、クラハになにかを伝えようとする。

 クラハ……やっぱり無理だ! 今のクラハじゃ、あの女神に勝てる気がしない!


『分かってる。そんなの、どうでもいい。少しでも、時間を稼ぎたいんだよ。にいさんが、クロヒが生きていれば、私はどうなってもいい』


 はじめてきいた、クラハの声だった。変ななまりは無くなって、普通の女の子のように、少し、悲しそうな声だった。


「……ケケケッ! 兄妹愛かぁ? けけっ、そう言うの俺は嫌いなんだよなぁ! さぁ、茶番は終わりと行こうか!」


 そう言うと、女神はクラハめがけて、上位魔法、《炎上円火》を、無詠唱で発動させた。

 クラハは、くるりと回って、その攻撃を悠々と避けた。


『神とは、こんなものなのか。衰えてしまったか』


「何だと? これが本気だとでも思っているのか!」


 炎を撃ち、それを避ける、それを繰り返している間に、ライルは、どうにかして、クロヒの洗脳を解こうとしていた。


「おい、クロヒ! 返事くらいはできるよな!」


『あぁ、直接お前の頭に言うことはできる』


 じゃあ、これはどうすればいい? この洗脳は、どうやって解けばいい? 急がないと、クラハが……!


『分かっている。だが、これは、周りがどうにかして解けるような簡単なもんじゃない!』


 じゃあ、どうやって……!


『俺が、自力で解かなければいけない。俺が深鈴を信じるしかない。深鈴を信じられていないから、俺は、こんな簡単な洗脳に引っ掛かったんだ』


 俺に出来ることは? 何かないのか!


『……クラハを手伝いに行ってくれ。俺は、自力でどうにかする! お前がいれば、出来なくもない!』


 ……信じて良いんだよな? 俺の妹は、俺の妹だからな! 信じていいんだからな!


『あぁ、分かってる。あんなやつにやられるなよ』


「こっちの台詞だ」

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