クロヒが探すもの
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062-2
ライルたちと別れたクロヒ。ライルたちとは反対に、南へ向かった。
『……ライルの妹さんがいなかったのは気掛かりだがな。とりあえず今は、リフを探しに行かないと』
リフは、白いやつ。光の守神のこと。数ヵ月前から、行方知れずとなっている。ライルがここ、レイリムに来たのは数週間前。関係はなさそうに見えるが、それは調べてみないと分からないのだ。
『どこ行きやがった……』
小さい羽を、パタパタと動かして雲のなかを進む。天気が悪く、雲が分厚い。他の生物から身を避けるにはちょうど良い。
リフが、レイリムにいるとう言う情報は、信頼できる知り合いからきいていた。
必ず、どこかにいるはず。アイツには訊かなきゃいけないことが沢山ある。主人は見つけたのか。力は渡したのか。……お前は、何を考えているんだ。
『……! この力は、なんだ!?』
突然、どこからか視線を感じた。膨大な魔力がクロヒを睨み付けた。
どこだ、どこにいる……魔力量が半端ない。ライルには負けるが、普通の人間にはあり得ない量だ。
『誰だ! どこにいる!』
そう叫んでも返事はない。何せ空中だ。白い雲のなか、相手からでも、クロヒの姿は魔眼でしか認識できない。
くそ、俺の魔眼じゃあ、相手が見えねぇ!
魔眼は、自分よりも相手の魔力が多い場合、相手を認識できないのだ。故に、クロヒよりも相手が強いことは間違いはない。
『くそ、誰だっ! 堂々と姿を見せやがれ! 今の俺じゃ、どうせ敵わないからのう……じゃなくて、敵わないんだからな!』
ふと、視線の端に影がうつりこんだ。
上だっ!
「へぇー、言い換えている暇があるのか? 守神さん? 私を誰だと思ってるんだ?」
女? いや、なんか違和感が……
『……誰だ! お前』
相手が、クロヒよりも上にいるために、太陽に反射して、相手の顔が見えない。
『降りてこいよ。ビビリか?』
「そうだな。ビビリだ。だから、相手より高い位置に、相手より強くなってきたんだ」
『そうかそうか。でもまあ、神には敵わないけどな』
「ほう、私が神だったらどうするんだ?」
お前が神だったらって……頭大丈夫かよ。普通、自分を神って言う奴がいるか?
『お前が神だったら? そうだな。主人を呼んできてやるよ』
「なるほど、ライル・リ・トリーユか。そうだな。呼べるのなら呼ぶが良い」
なん、だと……なぜ、ライルのことを知っている!? この世界には人間はいない。てっきり、言葉が話せる、獣人かなんかだと思ったのだが。
「なぜ、そう思ったよな? ケケケッ! さあ、さっさと呼んでこいよ」
『まさか、お前……!』
クロヒが、なにかを言おうとした、その時だった。
「うわあああぁぁああぁぁっ!?」
『この声は、ライル?』
「うわぁあぁぁ! あ、クロヒ~!」
ライルは、クロヒのことを見つけたようだ。
浮遊を使い猛スピードで、雲を掻き分ける。先程、誰かがいた辺りも蹴散らして。
『お、おいっ!』
「あ、また後で! あの洞窟でまた!」
『それは良いんだが……』
ライルが、去った後、誰かがいたはずの場所には、もう誰もいなかった。
何だったんだ……幻覚? いや、幻覚は闇魔法。俺には絶対耐性がある。じゃあ何だったんだ……
『のうー! にいさーん! ライルはこっちへ行ったか? あっちへ行ったか?』
クラハが、ノロノロと飛びながら、ライルが来た方向からやって来た。
『どうしたんだ。クラハ……ライルは南に行ったが』
『ありがとうなのじゃ。実は訓練の時に逃げてしまってのう……そこまできついかのう?』
そう言うことか……前の狸人の時と一緒で、逃げられたんだな。ライルが逃げるくらいだから、相当きついんだろうよ。
『そうかのう、これ以上簡単な訓練は、知らないがのう……』
等と、ぶつぶつ言いながら、南へ行った。
……俺はリフを探さなければ。




