女神が短気?
060
「じゃ、おやすみ」
『おう』
その日は、久しぶりにゆっくり寝れた日だった。と思う。
毎日毎日、慌ただしくて、ただただ疲れをとるために寝ていた毎日。
チュンチュンチュンチュン……
「うーん……」
よく寝た。寝過ぎて逆に疲れた。それに、なんか、こんなにゆっくりしてると、違和感があるんだが……俺はもう、ゆっくり寝られないのか。
そんなことを思いながら、暗く静かで、肌寒い洞窟を出た。
「太陽、まだ見えないな……今何時だよ」
思ったより早く起きちゃったわけだ。あ、深鈴を起こそう。一人じゃ、静かすぎるし。
ライルは、また洞窟の中へ戻った。
「おい、深鈴」
昨日、遅くまでいた焚き火辺りにいるかな。
そこには、まだ火が消えきっていない、焚き火があった。深鈴の姿はない。
「おかしいな。じゃあどこにいるんだろう」
『ライル……お前、早起きすぎ』
クロヒが眠そうな目をこすってやって来た。
いや、なんか、よく寝過ぎたのかわからないけど、目が覚めちゃってさ。
『あれ、妹さんは?』
……それが、どこにも見当たらないんだ。
『どっか、散歩にでも行ってんじゃないのかのう』
そうだな。じゃあ、俺も魔法の練習にいくか。昨日のところに行って、クラハに教えてもらおう。
『は? なんだって? 水の小娘のところに行くだぁ?』
な、なんだよ。行っちゃ悪いかよ。
『ダメだ。あいつは、一人目の主人をダメにしたやつだ。お前まで、そうはさせたくない』
ダメにさせたってどう言うことだよ。
『……あいつと一緒にいた、女の子のことだ。たった、2週間で、頭がおかしくなって、今じゃ、療養中だ。だから、ダメだ』
……どうせ、もう俺の頭はおかしいんですけど。と言うことで、さっさとこの世界から出たいので、修行に行ってきます。
『よし、じゃあ俺も行こう』
どうぞ。じゃあ、昨日のダンジョンまで、競争な。行くぞ、よーい……
『ドンッ!』
「あ、こらっ! ずるいぞクロヒーっ!」
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「……おい、準備はできてるんだろうな。リフ。主人は見つけたんだろうな?」
『はい、女神様。今、様子を見ているところです』
「そうか。じゃあ、準備が出来次第、王都に攻め込むように」
『は!』
リフと呼ばれた者は、そう言って、消えた。
ここは、神界。女神テイメが居座っている、第5層。指令室は薄暗く、モニターのようなものの光が目立つ。指令室の中央にいるテイメは、そのモニターから、ライルを監視している。
……そして、ライルが、笑う度に眉間にしわが寄る。
「あー、あー、ああぁ! なんで、あんなに笑ってられるんだ! 今どういう状況下におかれているか、あいつは分かってるのか!? イラつく! この俺が、直々に行ってやっても良いんだぞ!」
足を、地面にダンダンと打ち付けて苛立ちを隠さないテイメ。
「テイメ様。口が悪いです。そして、あなた様は、この5階層を守るという指名もございます」
「……分かってるさ。お前には負けるな。ミクレ」
「いえ、テイメ様が、ご自分の意思でそう動いていらっしゃるのではないですか。私はなにもしていませんよ」
ミクレは、そっと微笑む。
「そうだな。でも、俺のことを一番理解してくれるのは、昔から変わらないな。まあ、前世では、幼馴染みだっただけだけどな」
「もっと、頼ってもらって構いませんよ」
ミクレは表情を変えずに、そういった。
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『うえーい! 俺の勝ち』
「……はあ、はあ……いや、ズルしたから、負けだ」
ライルたちは、昨日のダンジョンまでやって来た。
『よく来たの。なんじゃ、やっぱり、わらわに……げ、クロヒさま……』
『やあ、クラハ。元気にしてたか? 昨日は、うちの主人がお世話になった』
クロヒは、喧嘩腰にそう言って、クラハに近づいた。
『ひっ!』




