クロヒが話さない理由その2
久しぶりに、茶番を入れてしまいました。
でも、話はちゃんと進んでます。
059
「な、な……」
『シッ!』
ライルは慌てて口を塞ぐ。
ごめん。でも、だって、しょうがないだろ? ここを出るには、魔法陣を使用しないといけないんだろ? それが出来ないって言われたら、黙ってらんないでしょ?
『……あのな、俺の話には続きがあってな』
え、続きあんの? それを先に言って。
『俺ら。つまり、守神たちは、上級魔法陣を使うことができる』
ほう。ま、そりゃ当たり前だよな。各属性の守神なんだからな。あ、じゃあ、クロヒならもとの世界に戻れると!
『いや、数時間前に言っただろ。戻ることはできないが、って』
ああ、確かに。言ってたな。……でも、どういう事?
『力を人間やその他に与えた守神に、その力はない。つまり、力を与えたやつには、その力がある。……分かったか?』
思考回路停止。クロヒが何を言っているか、全く理解できないライルであった。
……つまり、クロヒにはできない。で、俺にはできるのか? えーと、何が言いたいのか分からない。
『つまり、ライル。お前には出来ると言うことだ』
最初から、そう言ってくれないかな? ……でも、出来るんだったら、さっきまでの話は必要無くない? 黙って、スキルの熟練度上げさせておけば良かったじゃん?
『お前が、あの水の小娘に色々、吹き込まれていたから。……俺が後は全部教えるんだ……』
「……」
『それはどうでもいい! ただ、黙っておくのが嫌だったから』
え、何か照れてる? ねえ、照れてるよね? 顔赤いよ?
『だ、誰が赤いって!? 真っ黒な俺の顔が、紅く染まるはず無かろう!』
はいはい。それで、後は何を教えてくれるんだ?
『そうだな。何が知りたい?』
じゃあ……うーん。昼間話してた、無属性がどうたらの話は?
『あぁ、あれか。話していなかったのは、悪かったと思っている。ただ、目の前の事に集中して欲しいと思っていた。だから、魔法を使いこなす練習から、魔法陣が中級に上がるまでの間、言うタイミングがなかった』
クロヒは顔を紅く染めて、おどおどと話す。深鈴がいる方の、焚き火の炎がいい具合に、クロヒを照らす。見た目がぬいぐるみなだけあって可愛く見える。それもあってか、以外といい絵になっている。
そうなんだ。あの頃、散々俺をからかっておいて、それで集中して欲しかったとは……言っている事とやっている事が、矛盾している気がしなくもないけど。その頃の優しさと、今の正直さで見逃そう……
それで、無属性が使えるのは、本当の事なんだな。
『ああ、水属性がなくても、水くらいなら出せる。光属性がなくても、辺りを照らすことくらいは出来るぞ。後は……しょうもない物ばっかりだけど。試してみると、案外色々できる。考えようによっては、無限大だからな』
無限大か……
『魔法は、イメージだ』
母さんも、同じこと言ってた。
ぼうーっと、天井を見つめる。
固そうな岩だ。本当なら、今頃は学校の寮の別途にいたのにな。
『人生、そう上手くは行かないぜ。俺みたいになるなよ』
え? そんな、バカになるわけないだろ。
『今のは、大分真面目に言ったんだけどな……まあ、何かあったら、また聞いてくれ。ちなみに、ステータスには表示されないが、初級無属性魔法は、誰でも使える。じゃ、おやすみ』
へえ。じゃあ、俺の場合は、《初級無属性魔法陣》になるわけか。……なが。めんどうだな。




