クロヒ、参上!(ゝω・´★)
057
「深鈴、そっちの準備は?」
「終わったよ!」
よし、じゃあ後は……あいつが何処から来るかなんだけど、まさか、上から降ってくる訳じゃないだろうから。ひょこっと、頭の上に居たりして。
まさかと思って、とりあえず頭を触る。
……いない。やっぱり、上から?
「おにいちゃーん‼ 視界に黒いも黒い靄が見えるんだけど、、気のせいかなー?」
深鈴は、自分の目をこすって、もう一度よく見てみる。
「やっぱり、見える」
……はあ。クロヒ、お前さ、居たなら何か言えよ。
そこには、クロヒがいたのだ。どっからどうやって来たのかは分からないが、とにかく、食事の準備をしている、深鈴を邪魔している。
『おい、ライル。お前の妹はこんなに可愛かったのか?』
は? 何の話?
『何でもっと早く言わなかった? 黒髪のこんな美人、俺らの主みたいじゃねーか! いや、あれ以来見たことがないぞ……!』
あ? あるじ? なんだそりゃ。今は、お前らの事は聞かないけど、そのうちしっかり教えて貰うからな。
「お兄ちゃん……」
「あ、ああ。お前が今見ているのは、俺の守神だ。じーっと見てて気持ち悪いから、そのまま、手を伸ばして、思いっきり横に振れ」
「え、あ、うん。こうかな?」
ぱっしーんっ!!!!
ナイスショット! 俺もあれは食らいたくないな。出来れば……
『いっでぇー!? おい、ライル。お前、覚えとけよ! 後で、返すからな』
そう言えば、何か喋り方普通になってるな。どうしたんだ? ついさっき、話してたときまでは、『じゃ』とか、使ってたのに。
『あ、それな。昔の事を思い出して、ちょっと意識してるんじゃ、、してるんだ』
「守神って、本当に?」
「ああ、本当だけど。な、クロヒ?」
『本当だ』
「聞こえないけど……」
おい、なんとかならないか? 深鈴が、お前の事見えるようになる方法とか……
『あるにはあるんだけどな……やるのか?』
なにその意味深な言い方。なに? 何かやったら大変なことにでもなんの?
『いや、ならんが……よし、やるぞ、少し目をつぶっておけ』
ライルは、大人しく目をつぶった。
何をするつもりなんだろう。……? 何で俺が目をつぶらないといけないんだ? 深鈴が見るためにやるのに。
『いいぞ。目を開けろ』
え、もう? 俺は、なにもされてないけど。目をつぶる必要はあったのか。
そんなことを思いながらも、ゆっくりと目を開く。
「それで、クロヒ、深鈴は見えるようになったのか?」
『まだ。これから、移すから』
「お兄ちゃん。どうしたの? 目をつぶったり、喋ったりして。クロヒさんと、お話?」
クロヒ、早く見えるようにしてくんないか? 深鈴に誤解されたら困るんだけど。
『あいよ、行くぞ!』
「深鈴、なんか、今から見えるようになるらしい」
クロヒが、深鈴の頭の上に飛んで行き、ポンと座った。
そのまましばらく、座っていた。
10分が経った。
『よし、終了! やあ、妹さん! 俺が噂のクロヒじゃ、、だ!』
クロヒは、頭の上から飛び立って、パタパタと、深鈴の正面に飛んで出た。
「……? これが、あの有名な守神?」
きょとんとした顔で、ぬいぐるみみたいに可愛らしい、クロヒを見つめる。
なんだ、その反応は……確かに、守神がそんなんじゃあなぁ。リアクションをとりにくいのは分かるんだけど。
「クロヒ、残念だったな。きゃー! って言われなくて」
『まあ、どっちの意味でも良かったな……怖がられなくて良かったぜ……!』
ぐうぅうぅぅ。
ライルの腹の音が、周囲に響き渡った。
「あ……お腹すいた。そろそろご飯にしないか」
「あ、そうだね。……守神って、どんななんだろうって思ってて、見れたのは良かったけどな。ちょっと、想像と違って、ガッカリかな……あ、でも、可愛いよ!」
申し訳なさそうに言って、更に可愛いと付け加えた。クロヒにも流石にこれは理解できる。
『……あ、あぁ、腹へったな……あは、あはははは。ライル、ご飯にしよう、、あは、あはは』




