お米探し。見つけた洞窟。その2
054
『あはぁ。久しぶりの感覚よぉ』
あんまり、がっつかないでくれない? 髪の毛がボサボサになる。痛いし、爪刺さってるし。
『え、空気抵抗を受けている時点で、髪型は関係無くないかの?』
ライルの頭を撫でることを止めようとしない、クラハ。
クロヒをよく見たことがなかったから、気にならなかったけど、どうやって、その小さい翼で飛んでいるのだろう? どう見ても無理だよな。二頭身の体に、顔の半分の大きさもない、翼で。
『……ソナタ。小僧から聞いてないのかの?』
何を?
『……この姿になった理由じゃよ。ま、言わないのも当然と言えなくもないか』
何? どうしたの? どう言うこと? クロヒたちは、どうしてぬいぐるみみたいな姿になったんだ?
クラハは、しばらく俯いて、ようやく口を開いた。
『カカッ、単純なことじゃよ。なに、この世界、ヒルム、スワンルで魔法使いが少なくなってきているのは知っておるじゃろ? それのせいで、竜たちが衰えてきているのじゃ』
……だから、君やクロヒたちは小さくなったのか?
『それが、そう言う訳ではないんじゃ。わらわたちは、それぞれの世界に、優秀な魔法使いを残そう、と言うことで、それぞれの主人に、自分の力を与えたのじゃよ』
そうなんだ。それで、皆小さく……あれ、でも何か、白い竜を見た気がするんだけど。ぬいぐるみサイズじゃなかったぞ。
『ああ、それは……気にするんじゃないのじゃ。まだ、主人を見つけてないのじゃ』
あぁ。そう言うことか。じゃあ、そろそろ、あの建物について教えてくれないか?
『あれはの、まあ、ダンジョンのようなもんじゃの。行ってみるか? ヒルムには無いのじゃ』
へぇー。ダンジョンか……
ライルは、スピードを落とし徐々に下降する。石でできた建物に近付くと、ひとりでに扉が開いた。
「うわ、ビックリした」
『まさか、ヒルムにないとはいえ、ダンジョンは初めてかの!?』
ダンジョンなんて、そもそも知らないよ。興味なかったし。まあ、良いから、入るよ。
『カカッ、死ぬなよ』
そんな簡単に死なねーよ!
頭の上にいる、クラハを睨み付けながら扉を潜った。
中に入ると、正面にまた扉が見られた。天井は、ひときわ低く、ライルの頭がギリギリ届かないくらいだ。肌寒いし、光が入らないから、薄暗い。
先に進もうと、正面の扉に手をかける。扉を引っ張っても、押しても何をしても、びくともしない。
ガタガタ、ガタガタガタ
「開かない……これから何が起こるんだ……」
いきなり、戦闘はないよな。入ってすぐ戦いになるとか、鬼畜だろ。
嫌な予感がする。クラハも何も言わないし。まさか、どっかから魔物とか動物とか出てきたりすんのか!
そう考えて、辺りを見回す。
静まり返っていて、ライルの吐息しか聴こえない。魔物とかが出てくると言うことは無いようだ。
「クラハ。この扉は、何で開かないんだ?」
『……そうじゃの。まだ、レベルが足りんと言っておるの』
まだレベルが……? 確か今、65だった気がするんだけど。まだ足りないのか。
『足りんのう。まあ、また今度来てみようかの』
そうだな。もうちょっとレベルあげて、このダンジョンを攻略しよう。さて、帰るか……あ、お米。
お米忘れた。忘れてたー!! 今から探しても間に合うかな!? そう言えば、俺お昼食ってない。腹へった!
空腹と、勢いに任せて、ダンジョンを飛び出す。すぐさま、浮遊を使って、深鈴がいる場所へ。
しょうがない。深鈴にはしっかりと説明しよう。言い訳じゃないことも言わないといけない。
『カカッ! その時点で、すでに言い訳じゃ!』