お米探し。見つけた洞窟。その1
053
そう言えば、昔から深鈴はあんなだった。怒っているのかと思えば、次に目を合わせるとニコニコしながら寄ってくる。
情緒不安定って言うんだか、喜怒哀楽が激しいって言うか……あー分かんない。とにかく、俺も人の事は言えない。
『で、これからどこに行くんだ?』
お米探し。
『どこにあるんだ? それって、美味いのかのう!?』
相変わらずな口調だ。声しか聞こえないが、どうやら、興味津々の様子。
お前も、ご飯に目がないのか? ニトみたいなこと言うなよ……どんだけ、食い意地張ってんだよ。
『悪い。そう言う訳じゃないんだ。そう意味で言ったわけじゃ』
分かってる。良いんだよ。何か、ニトがいた数日が楽しくて、幸せだった気がする。あいつは、あいつのやるべき事をやりに行ったんだろう。
ま、とりあえず、米を探そう。その間に、クロヒ。そっちの情報をくれ。
『……いやぁ、情報をあげたいのは山々なんだけどな。今、神界にいるんじゃよ』
神界に? 何で? そんな緊急な用事でもあったのか?
『……緊急会議。神界史上初の規模。お前の事で、いろいろ忙しいんだ。何せ、一人の神が禁忌を犯してるからな』
禁忌を? あの女神は、バカなのか? そんなの、自分から悪役を勝手出るようなもの……そう言えば、元々、悪魔だったな。笑いかたとか。
『で、忙しい』
じゃあ、会議に集中してくれ。こっちは何とかする。米探すだけだしな。
『おうよ!』
そう言うと、プツっと声が途絶えた。
さて、浮遊を使うか。スキルの熟練度も、あげないといけないしな。
早速、スキルを発動させ、空に向かって飛び去る。風の抵抗が強く、地面に引きずり落とされそうになる。
流石に、高く飛びすぎたか……?
雲が近くなってきた。そろそろ、地上の様子を見ようかと、飛んでいるスピードを落とし、下を見る。
「……? ありゃなんだ?」
さっきまでいた、森の北側に、石でできた建物のようなものが建っていた。綺麗に切り取られた石を積み上げ、人が一人入れるくらいの、大きさの建物。明らかに人が造ったものだ。
人のいないこの世界に、何でこんなものが……?
「……どうしよう。お米を探そうか、あそこにちょっと行ってみるか」
食事に必須なお米を探して、深鈴のもとへ帰るか。好奇心に任せて、探索してくるか。そのどちらかで、ライルは奮闘の末、お米を探して、深鈴のところへ帰ることにした。
行ってみたいけど、米を見つけられなくて、そんな良い魔法使っといて何で見つけられないのよ! って怒られるのは嫌だもんな。ここは、安全な方を……
『ほう。ソナタは、闇の小僧の主か』
「!? 誰だ!」
クロヒ? いやクロヒじゃない。喋り方が全然違う。そもそも、今は会議中のはず。じゃあ、一体誰?
『……カカカッ! 警戒はするものの、怖がりはしないと? 面白いの』
「お前は誰だ! どこから話しかけてきている!」
『ソナタの、守神と同じじゃよ。闇の小僧の主よ』
闇の小僧の主? 闇の小僧ってクロヒの事か? それと同じってことは……! まさか、、
『ようやく理解したか。その通り、わらわも守神の一人じゃ。わらわは、水の守神。クラハ、とでも呼んでくれるか』
「そうか、じゃあ喋らなくても、会話できるんだよな?」
俺が何言っているか、分かるか?
『俺が何言っているか、分かるか? と言っておる』
……そこじゃないんだが、まあ、いいや。君は、どこにいる? 何で俺に声をかけた? この世界の事は知っているのか? 一応聞くが、あの建物はなんだ?
ライルは、空中に浮かびながら、くどくどと質問を重ねた。
『そんなに焦らんでも良いぞ。何せ、ソナタの妹殿は、楽しくてお料理をしているからの。ソナタは、まず一番に何が訊きたいのじゃ?』
そうだな。何で俺に声をかけたのか、かな。
『そうじゃな。強いて言うなら、興味があったからかの。カカカッ、なに、単純よ。闇の小僧が、金髪のソナタを主にするとは、驚いてな。それだけじゃ』
金髪? 俺って、そんなに金髪だったか? そう言えば、鏡の前に立ったことはあったけど、そんなに気にしたことなかったな……
『金髪は、わらわを創った魔法使い殿と、同じ髪色でな。それが、こんなに可愛いソナタの髪の毛だと言うと、どうにも愛着が……!』
ごめんなさい、ちょっと意味がわからないです。魔法使いの先祖が、金髪で俺がその金髪と一緒と言うことか? で?
『で? とはなんじゃ?』
で、君はどこにいる? この世界の事を知っているのなら、それを教えてほしい。
『カカッ! 欲張りよのう。ま、その金髪に免じて、わらわが一緒に行動してやるのじゃ』
一緒に行動……? じゃあ、近くにいるのか?
『ソナタの、頭の上じゃ。この髪、撫でてよいか?』
……構わないけど。ちゃんと教えてくれよ?
ライルの頭の上には、クロヒと同じく、ぬいぐるみと化した、竜がいた。水色の体に、金の瞳が輝いている。




