キレる妹
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052
ライルたちは森を抜けた。薄暗かった森から、ようやく解放された。日差しが心地よい。
「久しぶりに、太陽の下だな」
「さっき、浮遊使っていれば、太陽に当たれたと思うんだけどね?」
……浮遊ねー。何でも、そういうのにばっか頼っていると、後で後悔するんだよ。体力がなくなるとか。なんとか。目的の場所が見えているときは、歩くに限る。
などと、自分に言い聞かせる。
「それで、この後どうするの?」
そう言えば、決めてなかったな。
二人は森を出た所で、立ち止まった。
「うーん。俺が、浮遊魔法を上位にまであげないと、ヒルムには戻れないんだよな」
「どうやったら、あがるの?」
「……わからない」
あっけらかんとした顔で、ライルを見る深鈴。どうにも、脳が処理に手間取っているらしい。ようやく、現れた表情は凶。
「分からないって……?」
やばい、やばい。深鈴が噴火する。えーっと、えーと……んー、確かスキルの量がどうのこうの……
『はあ、俺の出番じゃな!』
クロヒ。知っているのなら、最初から言ってくれても良いじゃないか! 大体、そっちはどうなってるんだよ!
『いや、だって、ライルが言ったんだろ? だから俺はライルの、お願い! 助けて! が聞きたかったー』
分かった。確かに言った。俺が、助けを求めるまで手を出すな。みたいなことだろ? いつの話してんだよ。で、どうやったらあがるの?
『簡単じゃ、よく寝て、よく食べればーー』
「はやく、教えてっ!!」
「な、お兄ちゃん、、」
あ、やべ。やばいやばいやばい!
「自分がわからないからって、すぐ怒って! 人に聞く態度じゃないよね!? だから、短気って言われるんでしょっ!」
怒っているのは、深鈴の方じゃ……
『確かにな』
「いい? 分からないことはねぇ、自分で考えてみて、分からなかったら、誰かにヒントを聞くの。それで、もう一度考える。それでも分からないようなら、しっかり、教えてくださいって言って。そうじゃないと、失礼でーー」
それから、長々とお叱りを受けた。
森の出口で、ライルは正座を座る。深鈴が腰に手を当てて、心を込めて、言い放つ。
もっと、自分が短気じゃなくなるよう、頑張ってみたらどうなの!?
「はい、すみませんでした」
「はあ、久しぶりにこんなに叫んだ。何か疲れちゃった。お兄ちゃん、ご飯にしよ!」
ニコッと笑いながら、首を傾げる仕草。そんな、妹につい、心が緩んでしまう兄。
……妹が短気でも、可愛いところは可愛いんだけどな。言い返す気持ちはないけど、俺はこれでも、短気じゃなくなったんだぞ。
『ライル、お前……シスコンじゃったのか!?』
どう見ても違うだろ! 妹は可愛いもんなの!
『どう言うことだ?』
……どうでも良いから教えてくれ。どうやったら、あがるんだ?
『ああ、どれかひとつのスキルの熟練度を、20まであげる。そうすれば、上位になる』
簡単に出来るのか?
『まあ、無理だわな。かかっても、1ヶ月はかかるが……』
それでも、帰るにはそれしかないんだろう? じゃあ、やらないといけない。……熟練度って、どうやってあげるんだろう?
『使えば上がるぞ』
へーそうなんだ。じゃあ、一番簡単に使えるもの……浮遊を一番今使っているけど。熟練度って、普通に見れるの?
ライルは、ステータスを開いて、テキトウに押してみる。
ポチポチポチポチ。
『見れんよ。俺には見えるが、普通の奴には見れないんだよ』
あ、そうなんだ。
「お兄ちゃん! ご飯にしよ! お昼!」
じゃあ、クロヒに聞けば良いのか。そのときはよろしく。
『おう、大丈夫か。深鈴が呼んでるぞ』
「お兄ちゃん!」
気付けば、深鈴はとっくのとうに、火をつけて昼飯の準備をしている。どうやら、相当お腹が減っていたようだ。
「あー、今行く」
「お兄ちゃん、近くにお米がないか見てきてよ」
お米? 水があれば何とか見つかるかもしれない。この世界は、四季が混ざっているから、うまく見つからないかもしれないけど。
「ほら、さっさと行って!」
怒ってはいないようだけど、どうしてだか、俺を遠ざけたいみたい。嫌われたか?
『嫌われたな』
嫌われたのか。しゃあない、お米を探しに行こう。




