失踪届け、出して良いですか?
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048
「ねー、お兄ちゃん、ここじゃなかったの~?」
「いや、俺も聞いただけだから。分かんない」
ライルたちは、クロヒが言う通り、深い森のなかを飛び回っていた。
まあ、クロヒも全部知ってる訳じゃないんだもんな。
『おおよ、俺は、居そうな場所を言ってやっているんじゃ』
「聞いたって、誰から聞いたの? 私たち以外、ここに居ないのよね?」
森を見渡しながら、そう言った深鈴の口調は、ちょっとこわい。
……どうしよう。これ言い逃れできないよ? 正直に、クロヒの事を伝えた方がいいかもな。
『ほう。信じないと思うが、やってみたらどうだ?』
うん。アドバイスとかしてくれるのはいいんだけどさ、その喋り方、どうにかならない? ちょっと、イライラしてくるの。
『じゃ、黙ってる』
「……はあ。深鈴、信じてくれなくてもいいが、俺は今、ヒルムにいる、俺の守神と会話をしているんだ」
「へー、守り神ねぇ」
俺が、異世界に興味なかったのと同じように、深鈴は、振り向きもせず答えた。
これは信じてないな……。興味無さそうだし、俺も捜索に移るかな。
「守神……あの、6匹の竜のことよね。私、噂で聞いたけど、ヒルムの北の方で、白い竜を見たって人がいた」
「へぇ。白い竜を……」
俺が見たやつとではない、よな。でも、深鈴もそう言うこと知ってるんだな。
深鈴は相変わらず、下を向いている。
「そのくらい常識よ。それで、その竜が、お兄ちゃんの守神ってことね」
そこまで言い終わって、やっと、顔をあげた。
「へぇー、お兄ちゃん、やるじゃん! 世界に6匹しかいない竜を守神に! やっぱり、お兄ちゃんは変わらないね」
深鈴が、恥ずかしがったように、首を傾げた。
一方、ライルは、魔法で前進してはいるものの、あっけらかんとしている。
「……深鈴が、笑った……!」
我にかえって、一言そう言った。
「え、どうしたのお兄ちゃん。ちょっとキモい」
深鈴は、思わず顔をしかめた。
『おぉ、妹さん、厳しいな』
今の結構傷ついた。思ったことを、素直に言うと、女の人って怒るんだよね。中学校の頃、良くそれで叩かれた。
「お兄ちゃん、こっち。これちょっと見て!」
気が付くと、深鈴はすでに地上にいて、森の奥を指差していた。
何かあったのか? とりあえず、行ってみるか。
深鈴の指差した方には、山があり、その麓に大きな空洞があった。
「ね、怪しくない?」
「ここに、ニトがいるってこと?」
「そんな感じがしただけだよ」
少し、奥へはいるのに抵抗があったライルも、深鈴に連れられ、進んでいった。
薄暗く、気味が悪い。雨水かなにかが、天井から落ちて、ぽちゃん、ぽちゃんとなっている。足音が良く響く。深鈴が、光魔法を放っているお陰で、足元に気を配る必要はなかった。
「なんか、もうちょっと、明るくて、綺麗な場所かと思ってた。海沿いにあった洞窟みたいに」
「いや、あそこも変わらないぞ。こっちの方がまだ広くていい」
二人の声も、エコーがかかったかのように、響き渡る。
また、足音と水の滴る音だけに戻った。
『ライル!』
急に、クロヒがライルを呼んだ。
「わっ!?」
「えぇ! な、なに!」
クロヒの声に驚いた、ライルの声に、驚いた深鈴が叫んだ。
「お兄ちゃん、急に大きな声出さないでよ‼」
深鈴が、ライルを睨んだ。相当ビビっていたのだろう。涙目になっている。
「俺だって、出したくて出してるんじゃない!」
……クロヒが、クロヒが急に声を出すからっ!
『違う、驚かせたかった訳じゃない。そっちの状況が、見える訳じゃないんだが、音が聞こえたんだ。なんか、足音と、羽かな? そんな音』
「本当か!」
「だ、だから、お兄ちゃん‼」




