異、人間
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???
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「……うなあぁ‼ 何で! 何でぇっ!? 何で、深鈴は……オレを裏切った!? 覚えてろ……覚えてろよっ!」
「テイメ様……? オレ。とは一体どういう」
「あぁ? あ……ゴホンッ。な、何でもない」
「はあ」
ちっ。転生までさせてやって、転生特典まで、豪華に二つもつけてやったのに! このオレが、このオレがここまでしてやってんのに……!?
「て、テイメ様。先程の作戦、失敗に終わりましたが、どうしますか?」
「どうするもなにも、次をやるしかないだろ!
アイツはどうなった! あの、バイ?だったか?」
「いえ、テイメ様。ヴァイです」
どっちでもいい!
テイメは、訂正してくれた女を睨んだ。元々、つり目なので、力強い印象を受けるが、更に恐ろしく見えた。
「は、はい。ヴァイは、ただいま、客間にて待っています」
「そいつの様子を見に行く。一応聞くが、人間なんだよな?」
「はい。人間なのに、神界まで自力で来るなんて、凄くないですか!」
頬を赤く染めて、興奮している。
一体、そいつのどこに魅力があるってんだ。……自力で神界まで、か。そいつが強者だといいな。これからに、利用できるかもしれない。
「ケケケ、カカッ!」
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043
「いやさー、この嬢ちゃんに、捕まったときはどうなるかと思って、身構えたんだけどさ。案外、いい人でな!」
隣では、深鈴が恥ずかしそうに、ニトの話に耳を傾けている。
今日、ライルは深鈴と再会を果たし、今は、こうして三人で、食卓を囲んでいる。いや、食卓は囲んでいない。焚き火を囲んでいる。
夕食はと言うと、ニトが持っていた塩と、ライルが捕まえた、魚を料理することになった。ゆえに、塩焼き魚となった。
「久しぶりに、お兄ちゃんに会えたんだし、私、水遊びしたかったー!」
唐突にそんなことを言い出した。
「いやいや、お前、体の大きさ考えろよ。俺は110センチちょっと。お前は、150を優に越えているだろ!」
「あ、ヒドイ。さっきまで、深鈴って呼んでくれてたのにぃ!」
深鈴だって、喋り方変じゃないか。まるで、小学生の頃のように、子供っぽい。
俺だって、別に、恥ずかしいとかそういうのがない訳じゃないし、久しぶりに会ったから、なに言っていいのか分かんないし。
本当は、会いたくなかった。何て言えないし……
「なに?お兄ちゃん」
「え、なにって、何が?」
「分からないはず無いでしょ? お兄ちゃんがいなくなってからも、毎日お兄ちゃんの事を考えていた、私が、お兄ちゃんが今なに考えてるのか」
なにをいってるんだ。……俺が死んでからも、俺の事を毎日? あの、厨二病で、ハキハキ喋る、自分が一番ですっ、って言う妹が?
結局、なにも答えず、無言で返した。
「そうなんだよね。あの私が? って思ったでしょ? 厨二病なのは変わらないけど、これでも、お兄ちゃんっ子なんだから、お兄ちゃんがいなくなって、よく考えたんだ。今、お兄ちゃんがいたら、私、お礼を言わなきゃなって。今まで、迷惑かけてごめんねって。今度会ったら、私が助けるねって。」
「……」
「なのに、私はお兄ちゃんをまた、失っちゃうところだった」
深鈴は、深鈴の言う通り、もうあの深鈴じゃない。俺が知っている、深鈴じゃない。変わったんだ。大人になってる。自分の失敗を、次に生かそうとしている。
「お兄ちゃん。私を、助けてくれてありがとう」
「うん」
しばらく、沈黙が続いた。誰も、次の言葉を思い付かなかった。深鈴は深鈴で、今言ったことを思い返して、俯く。ライルはライルで、気持ちの整理ができていない。ニトはニトで、助け船を出せばいいのか、黙っていた方がいいのか、迷っていた。
が、一番最初に、言葉を発したのは、ニトだった。
「あ、あの。俺、先に寝るな」
「あ、うん。おやすみ」
「お休みなさーい」
俺、なにを言えばいいんだ。会いたかった? いや、本当は会いたくなかった。ごめんね? なにを謝るんだ? 俺がいなくなってからの話を聞けばいいのか? でも、俺が聞きたいのは……
「なあ、深鈴」
「ん? なぁに?」
「深鈴は、俺に会いたかった?」
「会いたかったけど……今、お兄ちゃんの姿をしていないのが、残念かな」
……そこ? 俺に会いたかったのは、確かなんだな……
ライルは、深鈴の顔を見て、覚悟を決めた。
「ありがとう。俺、本当は、深鈴に会いたくなかったんだ。でも、今の言葉を聞けて、思ったよ。会えて良かったって」
「……知ってた。いや、私も怖かった。お兄ちゃんに、もし会ったら、何て言えばいいんだろうって。それで、少し考えたんだけど、何でもいいかな、って思ったの」
深鈴が思っていたことと、ライルの考えていたことは、ほぼ一緒だった。
『何を、話せばいいんだろう? 会ったら、どうすればいいんだろう?』
流石、兄妹。何年会っていなくても、前にうまくいっていなくても、考えることは、心配することは一緒なんだ。
深鈴に、また会えて良かった!
二人が、すっかり眠ってしまった頃、ニトは一人涙をこぼしていた。




