失踪
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そんなに離れていないはずの、場所にまだつかない。ニトがいたはずの場所にまだつかない。あれから、数分走った。周りは、木と木、森の先も見えなければ、上は霧に覆われている。
全く検討違いの場所を探しているのではないか。ますます霧は濃くなり、視界が狭まった。
何でこんなときに限って……!
「くそっ! くそがっ! ニト! どこにいるんだ!」
流石に、体力の限界がだ。
膝に手をつき、肩で息をする。
空は見えないし、どっちから来たのかもわからなくなった。俺が、俺が迷子なのか?
「ライルくーん? どこかにいる?」
突然、どこからか声が聞こえてきた。
「誰だっ!」
「まーまー、そう熱くならないで! 相棒さんは、私の手の中よ! 助けたければ、海沿いの洞窟に来ることね!」
「……」
罠か? 罠なのか? でも、今ここには、言葉が話せる奴はニトくらいしかいない。じゃあ、ニトの言っていた、人間か? 声からして、女。一体何が狙いなんだ。……まさか、深鈴なのか?
「海沿いの洞窟に……? 海って、どこにあるんだ」
ライルは、海がどこにあるかも知らずに、歩き始めた。
体が勝手に動く。疲れきって動く状態じゃなかったのに、不思議と体が動く。
少し開けて、日射しが当たっていた道を進んだ。直感に頼るしかない。
5分後。
今気がついたけど、魔法を使えば良いじゃないか。浮遊魔法で、上昇して、辺りを見回して、海を見つければ良かったんだ。無駄に歩き回ることもなかったのに。
浮遊!
その瞬間、辺りの空気が一斉に、ライルに集まり渦ができた。そのまま、ライルを宙に浮かす。
生い茂った木々の間を抜け、青空が見える位置までのぼってきた。
「うわぁ」
今まで、閉ざされていた空間から、一気に放たれた解放感と、世界の絶景に息を飲んだ。
雲を突き抜ける山、あっちの山には桜の木、こっちの木には、紅葉の木がなっている。その山々に囲まれる、湖。その湖が、山を写し出していて、美しい。
「やっぱり四季は、関係無いんだな」
いや、そんなことを言っている場合じゃない。ニトを助けにいかなければならないのだ。とにかく、海を探して!
「海、海、海を!」
湖があると言うことは、どこかしらに、その元となるところがある。どっちに流れて、どっちから流れているか。
案の定、水が出入りする場所は二つあり、山側から流れ、今、ライルがいる方向に向かって流れてきている。
「じゃあ、このまま後ろの方に進めば良い!」
浮遊魔法を使い、川に沿って飛ぶ。進むにつれて、川が広がってきた。
「下流? もう少しだ」
少し進むと、空の色が反射した水溜まりが見えてきた。水溜まりは、水平線の向こうまで続いている。それを囲うように白い砂が、クリーム色の砂が見えた。
「海だ。海……! この、どこかの洞窟にニトがいる……!!」




