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あの人探し

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 039




 チュンチュンチュンチュン……

 んん……? 薄暗いな……まだ日が昇ってないのか?

  ライルは、そっと身を起こす。隣には、ニトが大の字になって寝ている。


「起こさない方がいいよな」


 よし。もう少しで朝になるだろうし、顔でも洗ってくるか。確か、少し言った先に川があったはず。

  ニトを起こさないように、そっと立つ。まだ、辺りは薄暗く、まるで夢の中にいるかのように霧がかかっていた。

 気味が悪いな。少し肌寒くなってきたし、さっさと用を済ませて、戻ろう。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――



「変なところにばっかり、気を使いやがって。そう言うところが、ほっとけなくなるんじゃないか」


 ニトは、ライルが言った後寝返りをうってそう言った。


 ……タッタッタッタッ


 不意に足音がした。


「……誰かいるのか!?」


 気のせいか? でも確かに足音のようなものが聞こえた気がする。

  さっきまで、木の上で鳴いていた鳥は姿を消し、枯れ葉の下にいた虫たちは息を消した。

 夜に焚いた、焚き火がまだパキパキとなっているだけ。

 おかしい。やっぱり、誰かいる。この世界に好かれない奴は、決まって悪い奴。


「誰かいるようだな! 恥ずかしがらず出てこいよ!」


 ひょいっと立ち上り、身を構えた。力業では勝ち目がないと知っていても。


「バレちゃった?」


 そう言って、ニトの正面の木の影から女が顔をだした。

 女!? ん? どっかで見たことがあるような。


「お前は誰だ。なにが目的だ。……お前も、人間だよな?」


「まあまあ、焦らないで。私は深鈴。んーと、ライルって言う、男の子を探してるの。私は、人間よ」


 ……! 思い出した! あいつは、俺が木陰に引っ張っていった、女だ。まさか、探している奴が会いに来てくれるとは。ライルの目的は達成できたことだし、俺はお役御免だな。


「あ、そう言えば、お前俺の言葉がわかるのか?」


「あれ? 無意識で話してたけど、良く考えれば、あなたにわとりね。んー? これは女神様がくれた力なのかな……? ま、いっか」


 神様? ッチ。こいつ、神を信じてるのか? 信じてても、良いこと無いぜ。俺みたいに、滅茶苦茶になる。


「それでね。今はあなたにちょっと、お手伝いしてもらいたくて」


「どう言うことだ?」


「こういうことよっ!」


 深鈴は、そう言いながら、素早くニトの後ろにまわり、ニトの口を塞いだ。


「ん!?」


「ゴメンね、にわとりさん。こうするしかないんだ」


 なんなんだ、この女! 放せっ! はなせーっ!


 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 ……急に静かになったか? 様子がおかしいな。

 ニト……ニトは!? 嫌な予感がする。


「ニトーっ!!」



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