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ニトと言うにわとり

 037




 紺色の空に輝く星が見える。ライルは、葉っぱを敷き詰めた地面に寝転がって、空を見上げる。


「はあ。やっと一息つける。……俺は、これからどうしたら良いんだ……? クロヒは、上位がどうの言ってたし。おまけに、あと1年無い学校生活から、抜けちゃったし。俺はどうすれば……」


「うっせーな‼ 綺麗な空が台無しだろっ! 良いんだよ、んなもん! あとで考える! 未来の自分に押し付けろ」


 未来の自分に押し付けろ……って言われても、どうせ、未来の自分もこうやってぶつぶつ考えるんだぞ。人が変わらない限り。


「いいか? 悩んで行動しないより、行動してから悩んだ方がいいんだよ。まず、進む。行き止まりなら、戻れば良い。な? そう言うもんだろ?」


 生まれて初めて、にわとりに諭された。

 ……人間より、にわとりの方が、知能が高かったりしないよな? ニトがおかしいだけだよな。うん。


「さっさと寝ろ。明日は早くに出るんだ」


「あ、うん」


 明日は早く、か。俺は、どうやって帰れば良いんだろうな。転移? いやでも、上級まであげないといけないし。

 うん。ニトが言う通り、明日考えよう。明日の自分に、押し付けよう。






 チュンチュンチュンチュン……


「コケコッコーッ!!!!」


「ぶあぁ!?」


「おはよう。ライル。朝だ」


  朝、いや、まだ山に太陽が隠れている。そんな時間に耳元でニトに叫ばれた。

 にわとりって、本当にコケコッコーって言うんだな。声大きいし。鼓膜破れるかと思った。


「すまん、ライル。この木に火を付けたいから、押さえていてくれ」


  そう言って、木を地面に置き、もう一本木を持ってきた。地面に置いた木には枯れ葉が置いてあった。

 待て、まてまてまてっ! まさか、原始人みたいに、摩擦で火を起こす訳じゃないよな? まさかそんなことしないよな?


「あ? どうした? 早く押さえろ。それとも、木の棒を持って回すか?」


 こいつは……原始鶏(げんしどり)だ。ヤバい。文明を進ませなければ。一生、木と木を擦って火を焚いてしまう!


「ニト、俺がやることを見ておけ。いいな?」


「お? 何だ? 焚いてくれるのか?」


 炎魔法、燃えるイメージ、、、


「おぉぉ! なんじゃそりゃ!?」


「これ? 魔法って言うんだよ。知らないだろ?」


「え! 俺もやってみたい! 教えてくれ‼」


 え、今日は早く出るんじゃなかったの? 旅に行くんじゃないの? 魔法なんか教えてたら、夜になっちゃうけどな。


「今日は、旅、進めないの?」


「あ? ああ。別に急ぎじゃないからな。特に理由もなく旅しているわけだし」


「ふーん。じゃあ、やってみる?」


「おう!!」



 結局その日は、魔法のイメージトレーニングで終わった。初日に、できたら凄かったが、魔法と言うものを知らないにわとりが出来るわけもなく。そもそも、にわとりに魔法が使えるのか?

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