古いお家
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003
あ、誰か来るぞ。看護師さんか? 母さんは、2時間前から帰宅の準備をしていたみたいで、もう出る準備万端。
コンコン
「失礼しまーす! そろそろ、お帰りの時間ですが……」
「あ、はい!」
「……もう、準備万端ですね……!」
確かに。母さんは気が早い。看護師さんが引く訳も分かる。どれだけ家に帰りたんだか……
「看護師さん! ありがとうございました!」
なぁ、母さん。俺たちは今までどこにいたんだ?
「いやぁ、病院ってのはもう少し怖いところだと思っていたわ。普通、貴族とかは、家にお医者様を呼ぶもの。病院は怖いって言われていたのよね」
独り言が長いな…ってか、その台詞からだと、俺の家は、貴族じゃないってことか!? じゃあ、なんだよ!? 平民!! まさかの平民か!? それじゃあ、俺は、、、
いや、それはもう少し大きくなったら母さんに相談しよう。
それまでは、子供として過ごそう。変に思われたくないし、母さんは優しそうだから、きっと相談に乗ってくれるだろう…
「さぁ、待っていた馬車が来たよ~!」
? 馬車を待っていたのか……!? いや待て。俺は本当に異世界に来たのか……転生といったら、大体そんな感じだとは思っていたけれど、、貴族、馬車……今更驚けないけど、俺は、本当に転生したんだな……
「揺れるからね。気を付けてね」
ゆ、揺れる……!? 待って、今考え事してて、それどころじゃないのに、揺れるだと!? 俺が、揺られるの嫌いだって知っているよな!?
なぁ!
……思ったより、揺れない。道が整備されているのか?なんて、ありがたいんだろう。
「ほらライル。見える? あれがお家よ」
俺は、調度見える位置に抱き上げられた。
おぉ、何か古い洋館……お化けでそう。あの家に住むのか……? それなら、前世の方がまだ良い家だった気がする……
「馬車の人、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ。かわいいお子さんですね。」
かわいいお子さん? 俺は、男だ。
「赤ちゃんは、みんなかわいいものよ。」
だから、何で? 俺の心が読めんのか? 何か、不思議な母さんだよな。
パカッパカッパカッパカッ…
ん? これは、競馬でよく聞く…いや、聞いたことはないわ。馬の足音だよな? 誰だ?
「え? パパじゃない! ライル! あれは、お父さんよ!」
え、父さん? え、どんな人? 気になる!
「ルーラー! すまない! 帰ってきてしまった! どうしても、我が子に会いたくて!」
我が子……俺に会いたい? 優しい言葉……俺、初めて言われた。もうこのまま、この家の子として育とうかな。
……はっ、いかん。おれは、俺だ。あぁ、もう変な考えが! 鬱陶しい!
「ニヒル! そんなに会いたかったの? 明日でも遅くなかったのに」
「いやぁ、上司に子供が生まれるんですっていったら、帰って良いぞ! って」
「あらま。良かったわね」
その上司さん、優しい人なんだろうな。会話からするに、父さんと母さんは仲睦まじい夫婦のようだ。これからの生活が楽しくなりそうだなぁ。
勝手に転生させられたが、これはこれで別に良いかもしれないな。