食べ物を知らないにわとり
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035
「……で、少年。名前は?」
俺の話、聞いてないだろこいつ。
「んで? 名前は?」
はあ。
「俺は、ライルだ‼」
「へぇー。んま、よろしく」
ニトと名乗るにわとりは興味無さそうに、森の方へ向かっていった。
あんなに名前聞いといて、その態度はなんだよ。
「おいっ! どこ行くんだよ」
「あ? いや、俺は、旅に行くんだよ」
「何だ? 俺をからかってるのかよ!」
「……」
何なんだこのにわとりは! 情緒不安定と言うかなんと言うか。めんどくさい奴っ!!
スタスタと行ってしまった、ニトを追って話しかけた。
「おい、ちょっとついていって良いか?」
「あ? 好きにすれば?」
「俺、住む場所無いし、食べ物もないから、ついてく」
ニトはいまだに無言で、にわとりの足をペタペタと押し付けて歩く。
森に向かって、ライルたちは草むらを歩く。太陽が、ギラギラと輝きまるで真夏のようだった。
冬のはずなのに……季節が変わるのは当然か。
世界が違うんだからな。
「……はあ。お前、いつまでついてくるんだよ」
「え? うーん。いつまでだろう?」
「はあ? いい加減、どっか行ってくんない?」
さっき、勝手にすればって言ったのは誰だよ。
「行かないよ。……なあ、この辺に食べられる食べ物ってあるか?」
「自分の要望だけを通すなよ……お前……はあ。もう、良い。好きにしろ」
どうやら、ライルに呆れたようで、すっかり疲れきったと言う顔をしていた。
「この辺には、毒キノコはない。その辺の草も、食べようと思えば、食べられるぞ」
「いや食べないから。キノコしかないのか~どうせなら、他の山菜も欲しいよな」
「お前、キノコ以外に食べ物知ってんのか!?
今すぐ教えろ! 早く!!」
このにわとりは、食べ物が好きなのか? いや、食べ物に目がないのか。
さっきまで、虚ろな目で歩いていたニトは、キラッキラの眼差しをライルに向けていた。
「……キノコしか知らない奴とか初めて見たな」
「どうでも良いから、早く!!」
「俺に世界にはな、米と言う最高に美味しいものがあってな。そこに、カレーをかけるのが最高なんだっ!」
「かれー? ってなんだ?」
「カレーってのはなーー」
ニトは、興味津々にライルの話を聞き、ライルも、熱く料理について語ったのだった。
きっと、無意識に、前世の記憶が頭を横切ったのだろう。
「俺、米が食いたい」
「いや、この辺には無いだろ。米は、水に生えてるんだ」
「みみ、水に!? 腐らないのか!?」
「腐らないよ。この辺にあるとしたら……」
森か……タラの芽とか、か? 探してみるか。よもぎとかも生えてんのかな~? シソは? 森を抜けたら、どっかにニンジンとジャガイモとかないかな?
「おい? ライル?」
「え、ああ。そうだな。タラの芽、探してみる?」
「たらのめ……?」




