表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/78

まさかの中止、あの日の作戦。

 031





 ダンダンッダンダンッ!


「ん……んん? もう朝なのか……」


 ダンダンッダンダンッダンダンッ!

 三日前くらいにも、レミスに起こされたよな。また、レミスか?


「はーい。開いてますよー」


「おお、そうなの! じゃ、入るねーって、違うから、違うからね? ライルさん! レミスさんにはもう言ったのだけど、今日の属性屋の見学中止になっちゃったから、一日お休みね!自由に過ごして!」


「今日の見学……中止? は、はあ、分かりました」


「じゃね!」


 全く先生らしくない、先生がカツカツとヒールの音をたてて、遠ざかっていく。


「今日の見学は中止か……マジか。一日自由になったぞ! クロヒ! 聞いたか! 休みだ!」


『へぇ、へぇ。聞いてますよ。見学、楽しみにしていたんじゃないのかよ!』


 うーん。まぁ、3年前くらいに行ってるし、いいんじゃないかな。でも、何でこのタイミングで中止なんだろう? 何かあったのかな?


『さーあね。で、何をするんだ?』


「せっかく、自由なんだから、決まってんだろ。今後の対策さ」







 ……時が過ぎること2年ちょっと……

 ある、冬の午後7時。ライルの自室。



「おい、クロヒいるか?」


『何だよ』


「俺、あと一年で、卒業だぜ?」


『お前が卒業か。信じられんのう』


 ……その喋り方は、結局直らなかったよな。聞いてて違和感すらなくなってきたよ。


『何だよ、その言い方』


 ……なぁ、クロヒ。俺がもし、急に居なくなったらどうする?


『どうするもなにもないだろ。探しに行くさ。それに、お前が急に居なくなるようなことなんて無いだろ?』


「……そうか。その言葉を聞けて嬉しいよ」



  今思い返せば、昔のこと。会ったばっかりのレミスや先生と見学にいったり、装備屋で思いもよらない出会いがあったり。そんな、日常があれから2年続いた。そして、そんな日常もあと1年しかない。

 ……楽しかったな。


 2年の時の、キャンプファイア。学校の敷地内の森で、一日を過ごした。大勢でそこにいれば、楽しいキャンプファイアだが、先生含め3人と言う少なさだから、そうでもなかった。

 そう言えば、あの時、レミスが何かを話したそうにしていたけれど、それを聞くタイミングは無かった。


 今年の夏。海にいきたいと言い出したレミスに、プールならいいんじゃないか。そう提案したら、学校にプールを造ってしまった。まあ、お陰さまで、皆楽しめた。


 来年は毎年4年生が行く、王国の北、未開拓地の魔物捜索があるらしい。魔法が使えるからと言って、10歳にならない子供を連れ出すのはどうかと思う。魔物だぞ? 大人数人でも一匹処理できないのに、子供にやらせるか? 魔法使いは、大変だな……俺もその一人なんだが……


 何故こんなことを俺が考えているのか。何故今までを振り返っているのか。



 昨夜、夢を見た。

 暗闇に一人たたずみ、にやにやと笑っている女を見た。

 あれは、間違いなく、あいつだ。


 女神だ。


 そして、言っていた。


『見えてるか? ライル君? 私は、君の妹と約束をしてしまったのだよ。君を殺してってね。だから、そのうち会えるはずだよ。いや、私が、無理矢理そう仕向けておいた。覚悟をしておくといい。そう易々と、日々が幸せが手に入ってたまるものか。お前には、もうしばらく踊ってもらうぞ? ケケケ、ケケケケケッ!』


 そして、また一言。


『人間のいない世界、レイリムはお前の墓場となるだろうな!』


 だから、俺は覚悟を決めた。この為に、俺は、あの日、作戦を練ったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ