見学?いや、情報網の拡大です。
028
ライルたちは今日も王都で色々なところの見学。
昨日、お世話になったのは、商人のおじさん。突然お邪魔したにも関わらず、優しく出迎えてくれたのだ。そして、こんなものを貰った。
「売買許可証……」
いや、まて、何故こんなものを俺が貰わないといけないんだ?
これがあれば、どの町に行っても、売買が簡単に出来ると言う。どうやら、この世界は各地域でそれぞれの、売買の許可が必要らしい。
『……商人に相応しい人物を見つけたときに、商人が渡すやつだな』
俺、商人に才能あるの? 興味はあるけど、別になりたい訳じゃ……
『まあ、貰っとけよ。これで、そこらの商人と友好関係が築けるな!』
はあ。別にそれも要らない……
そんな会話をしながら、着替えを済ませ、レミスたちが待っている玄関へと向かった。
「遅いなぁ、もう」
「ごめんごめん。着替えに手間取って」
『嘘つけ』
「クロヒ? それはどういう……」
「あーーーー! なんでもないよー! うんうん!」
おいクロヒ! 属性を三つ以上持っているやつには聞こえるんだろ! 気を付けろよ!
『はは、すまん。わざとじゃないんじゃ』
「二人とも、今日はどこへ行く? 装備屋か、属性屋のどっちかなんだけど」
それは、先生が決めれば良いのでは? 別に行きたい場所なんて……
「はいっ! 私、装備屋!!」
「じゃあ、それにしましょう。さぁて、しゅっぱーつ!」
生徒を差し置いて、先生が真っ先に丘をかけ降りた。
おいおい、装備屋でも別に良いんだけど、先生が一番、乗り気でどうすんだよ。
「せんせー! まってー!」
そして、もう一人。
「レミス!? ねぇ、そんなに急ぐ必要ある!?」
全く関係無いが、ここ、王都は深鈴がいたような、中世ヨーロッパそのものである。もちろん、ライルは全く気がついていない。
「はぁ、はぁ、……やっと、着いた……?」
「遅い~! 今度の授業は、体育だね~」
……ふざけるな。お前らが速いだけだろ! 確かに、俺が遅いのかもしれないけど、飛んでくれば造作もないんだからな!
「じゃあ、今日は許可をちゃんと取ってあるので、装備屋にお邪魔しましょう! お邪魔しまーす」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
装備屋か……以外とちゃんとしている場所と言うか。妹から聞くには、もうちょっと、暗い感じかと思ったけど、普通の家みたい。そこに、ぶきやら装備やらが置いてあるような感じ。
「おう! 来たか! ここの物なら好きに見ていって良いぞ!」
おぉ、装備屋のおっちゃんは、正しく装備屋のおっちゃん。俺の想像と合ってる。
『当てにならない想像だな』
うっせ! 別に良いんだ!
からかわれて、少々腹が立ちながら、ライルは壁に飾られている、装備に目をやった。
「あっ、」
あれは、え~と、何だっけ? あぁ、喉元まで出てきてるのに、、えー、ぱ、あ! パーカーだ! この世界にも、パーカーってあるんだな。
飾られた装備品のなかに、偶然、パーカーを見つけたのだった。
「お、あんちゃん、眼があるね~! それを選んでいく奴はあんまし、いないんだぜ? 結構いい効果がついてるのになぁ」
「いい効果?」
「あぁ、これには、属性魔法強化と耐性が付くんだ。この二つがついてりゃ、勝ったも同然だな! それに、この生地、高いんだぜ。もちろん、防御力はこれでも72! 普通のやつよりは、いけてるぜ!」
おっちゃんは、生き生きとした目でパーカーを見つめて言った。
この世界の基準が分からないけど、これだけ、熱く語るんだから、相当のものなんだな。きっと。
「そうだ! これ、タダでやるから、ちょっと俺と話しないか!」
「えっ!? タダ! マジ!?」
って言うか、おっちゃんの方に利益なくない? これは受けるべき話なのか?
タダ、と言う言葉にライルは目がない。もと貧乏にタダと言う言葉は使っちゃいけない。
『俺は、しらん』
えー!? こう言うときこそ、教えてほしいんだけど。
「その年のわりには、いい目をしてるからな。気に入ったぞ! あんちゃん!」
「は、はぁ」




