共通する世界
024
学校を出て王都に向かうため、近くの林のなかを行く。昼間だと言うのに、薄暗くすぐそばにいる先生やレミスが本当に近くのいるのかが心配になるくらいだった。
地面の至るところに苔がはえ、稀にある日向は苔が茶色く変色していた。
木からは、蔓が垂れ下がっていた。
俺の家じゃないんだからさ、幽霊出てきますよ的なやつやらないでくんない? こわい。
『出てくるわけない。北の未開拓地じゃああるまいに。王都で有名なのはそこだけさ。後は、西にある幽霊屋敷とか。海沿いにあるーー』
もういい。結構だ。それ以上聞きたくない。それに、俺がそんなこと知ってるわけないだろ。昨日まで、貴族だってことも知らなかったんだ。王都だって、属性屋に行っただけだし。
『……井の中の蛙め。両親に聞こうとか思わなかったのかよ』
知らねーよ。
『じゃあ、ただの言い訳にすぎん‼』
あぁ、もう、うっさい! そもそも、何で貴族があんな家に住んでんだよ!
『あんな、じゃなかろう。俺が守ってたし、それに、有名な貴族の別荘だぞ。それをお前の父が、譲り受けたんじゃ!』
分かった、分かった。俺が悪かった。
それより、レミスの家と言うか商人ってどんな奴なんだ?
『……ライル、お前あっちの世界で、こっちの世界を物語った、本なんかがあったんじゃないのか?』
ごめん、何言ってるか分かんない。それにそう言うのは、妹が好きだったんだ。テキトウな知識は、勝手に詰め込まれたけど……
『おいおい……じゃあ、俺が全部説明する。はぁ』
ため息つかないで! 俺が悪いみたいに見えるから!
この期に及んで、世界を全く知らないライルを、我が子を見るように話すクロヒ。
二人(一人と一匹)は、授業をしに行くまでの道で、すでに授業を始めていた。
この世界は『ヒルム』と言うそうだ。怯むじゃなくて、ヒルムだ。
ヒルムの周りには世界が3つあり、人間の住んでいない世界、『レイリム』。魔物たちが、住処としている魔界。もうひとつの世界は、人間、亜人、魔物、動物たちが共存する世界、『スワンル』。
また、全てをまとめている、神々の世界、神界はいつでもどの世界でも、近くにあるのだそうだ。これは、常識ではなく、神知識。
レイリムを除き、それぞれの世界には、それぞれの世界に通ずる門があると言う。ただ、その門は魔法が使えなければ、開かない。レイリムは、そもそも門はないので、人間などは立ち入れない。
この世界、ヒルムには沢山の人間が住んでいる。
大昔、『魔法使い』なるものが誕生した。自力で、魔法を作り出したのだ。その為に、6属性の守神が出来上がった。今は、どこにいるかも、何をしているかも不明となっている。
『魔法使い』の子孫のみが魔法を使える。ただ、魔法使いは一人ではなく、複数人いたそうだ。だが、その子孫が全員使えるわけではなく、選ばれた者にしか使えないそうだ。
300年前、王都が誕生した。
それから、職業として、『冒険者』が新たに追加された。それまでは、日常で必要なものを売る店などを営業する、商人。商売人が有名な職業だった。冒険者が増え、魔物に攻められ敗北することが少なくなった。今まで自由に生きてきた魔法使いは、王の護衛をするか、冒険者になるか、選択を迫られた。
後に、王国魔道師ができた。だが、王国の魔道師だと言うのに、報酬は安く、魔法使いは日に日に減っていった。
一方、街では商業や工業が発達し、王国は栄えた。
商業で有名となったのが、リヒソン家である。商業を営みながらも、祖先が魔法使いだったリヒソン家には、ある時一人の魔法使いを授かった。それが、レミス。
話がそれたが、今の王国は深い歴史があって成り立っているそうだ。
『と言うわけだ。どうだ? 分かったか?』
うん、全然分かんない。まぁ、それはまた聞くよ。
『はぁ』
「ライル! こっちこっち、そろそろ着くよー!」
「あ、うん!」




