入学、力試し。
017
広い部屋。天井は3メートルは優にある。白く塗られた清潔感漂う壁、無意識に目に入ってくる赤いカーペット。
壁には、賞状やトロフィーが飾られている。
そしてその部屋の中央に、置かれた椅子2つ。
その正面には、長机。
緊張感が辺りを包み込む。
中央の椅子の1つにはライルが、もう1つにはレミスが座っている。
あぁ、こういうの嫌だな……無駄に広い場所もあんまり好きじゃないし。あれだ、入試だ。ここは、姿勢正しく、しっかりと審査員なる先生の目を見て……!
コンコン……
「失礼します」
ライルたちが入ってきた扉と同じ扉から、3人の大人が入ってきた。そして、正面の長机に座った。
「……そんなに、緊張していないでいいのよ。楽な格好で良いわ」
女性が言った。
……緊張しなくていいって言われてもな……まあでも、優しそうな人で良かった。
「これから、魔力を測ります。一人ずつ前に出て、魔法を発動させてください」
じゃあ、俺が、……!? 体が動かない! 手に汗が……俺、超緊張してる……?
「はい! じゃあ、私から!」
ライルの様子を察したらしく、レミスが最初にやると言って前にでた。
レミスちゃん……! ありがとうございます。
……これで、自分の番に向けて、イメージを強く持って!
そうだ、レミスちゃんはどんな魔法なんだろう?
「大地の命なる水よ、我が前に!」
……え? 何か唱えないといけないの!? えぇ、俺そういうの苦手なんだけど……
レミスがそう唱えると、部屋中に水滴が浮き上がり、レミスの周りに集まった。
「レミスさん。そのままキープでお願いします」
「あ、はい!」
まじか……え、それに、魔法陣とか出ないんだ? 俺、てっきり魔法陣を使って魔法を出してるのかと思ったんだけど。俺の場合無意識で魔法陣できてたしな……
「はい! レミスさん良いですよ。今、この学校で一番かもしれません‼」
「本当ですか!」
レミスが意識をそらした瞬間、周りに集まっていた水が、辺りに飛び散った。
!?
「あわわわ! ご、ごめんなさい!」
「いいですよ。気にしないでください」
うわぁ。俺の服が……最悪。
しょうがない。風魔法、、唱えた方がいい? いや、いいや。
とりあえず、この部屋と皆の服を乾かして。
シュウウウゥゥゥゥ……
「この風は……! ライルさんあなたの……!?」
前に座っていた女性が自分の服を見たあと、ライルの方に向き直した。その瞬間、女性は目を見開いて静止した。
え、何? 俺、何かやっちゃいけない事した?
何? なんで皆して、俺を見てるの?
「……ライルさん……あなた、自分が何をしているか自覚はありますか……」
「え、えと……魔法を発動させているだけだと……」
「そう、ですか……自覚はないんですね……」
自覚? 何の?
「あなた、王国魔道師並みの魔法を発動させているんですよ。その魔法陣が、何よりの証拠です」
「魔法陣……ですか……?」
この魔法陣が、王国魔道師並みの……?




