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 016




「ーール! ライル!」


「……んん」


「ライルってば、庭で寝ちゃってたのよ?」


 ……母さん。俺は……寝てたのか? ……クロヒ……じゃああれは夢だったのか……


「そろそろご飯にするから、手を洗ってきて!」


「う、うん」


  足取りは重く、グダグダと洗面所に向かう。

 クロヒ……お前は、一体何処に行ったんだ? 守神何だろう? 守る主を離れてどうするんだよ……


 ふと、鏡に目をやった。


「……お前……あはは。変な顔! こんなんじゃ、やってらんないよ! あははは!」


  鏡に写る自分を見て、笑った。それほどに、可笑しな顔をしていたのだ。

 心なしか元気が出た気がする。そうだな。じゃあ、クロヒが帰ってくるのを待つんじゃなくて、自分で探しにいってみるか!


「よしっ!」



「ライル~! 鏡とにらめっこしていないでよね~!」


「あ! うん!」


  手を拭いて、リビングに向かう。


「さぁ、召し上がれ」


「いただきまーす!」


 今日の夕飯は、カレーライス。甘い……さすがに甘すぎないか?


「そう! 今日、魔法の練習していたのよね! 入学式まであとちょっとだし、頑張ってね!」


「うん! 順調だよ。今日は、風魔法で浮遊魔法って言うオリジナルを作ろうとしていたんだけど、上手くいかなくて……えへへ」


「そう。オリジナルを……じゃあ、イメージは大事よ。オリジナルなら尚更。魔法と言うのは、その人の創造力で無限に増えるの。だから、きっとライルなら出来るわ!」


 母さんのこの笑顔は万能薬なのか……? 暖かいなぁ。



  そのあと、甘いと文句を言ったカレーライスを2回おかわりして、2階へ上がった。


 2階、さぶいなぁ。明日で、6月になるってのにこんなに寒くて大丈夫かよ。

  そう思いながら、自分のベットに潜り込んだ。


 入学式、必ず成功させてやる!


  そう決意すると、深い眠りに落ちた。




 9月2日。

 魔法科学校、入学式会場。


『これから、入場を開始します』


 今年は、二人だって聞いたけど、もう一人まだ来てないみたいだな。


「ライル、頑張ってね!」


 母さん! 父さんも! 2度目の入学式なのに、緊張するけど、頑張ろう。うん。

 あ、でもな。一人で入場は恥ずかしいぞ? 早く来てくれないかな。もう一人。


「ヤバイヤバイ! ごめんなさーい! ちょっと失礼します!!」


「うおっ! 誰だあの子!」


 叫びながら、走ってくる女の子は、人の波を抜けてようやく、ライルのいる所までやって来た。


「なー! ま、間に合った! あ!あなたがもう一人の?」


「う、うん。僕だけど……」


 なんじゃ、この子。

  走りやすそうな、短パンに、長めのTシャツ、髪の毛を後ろで束ねている。髪の毛と瞳は、栗色。顔つきと、格好から何となく性格はわかる。


 陽キャだ。

 俺も、どっちかと言うと、陽キャに入るんだろうが、この子は正しく陽キャだ‼


「私、レミス! レミス・サーリビル・リヒソン! よろしく!」


 いきなり、フルネーム! やはり、サッパリ系の活発女子だ! いや、さっきは陽キャとしかいってないか。


「よ、よろしく。僕は、ライル・リ・トリーユ」


「ライルね! 私の事は、レミスって呼んで!」


「う、うん」


 ヤバイ! 調子がでない! レミスちゃんが、どんどん話を進めるから、相槌しかできない!!


『新入生の入場です!』


 パチパチパチパチパチパチ……


 ライルは、ステージに上がった。沢山の人の目が、ライルたちを見ている。


 皆、ジャガイモ……皆、人参……皆、ジャガイモ…皆、人参……


「ちょっと、ライル! 退場よ!」


「え、あ、うん」


 あぁ、俺は何をやっているんだ。緊張しすぎて、周りが見えなくなっていたのか!

 入学式早々、典型的な陽キャに会うわ、緊張しすぎるわでもう、精神的にやられたぞ、これは……

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