さぁ、異世界へ。
???
「君は、確か、剣道部だったよね。じゃあ、転生特典は……日本刀かな?」
「一体なんの話を……?」
「あれれ? もしかして……自分が死んだって気付いてないの?」
「え……」
ま、その反応は当然だわな。だって、俺が無理矢理転生させようとしてるんだもんな。けけけ、まぁ、俺の作戦は成功していると言うわけだ。
手を出すなって、出さないわけないだろうよ?
「まぁまぁ、転生を気楽に楽しんでくれよ。もしかしたら、お兄さんにも会えるかもよ?」
「お兄ちゃんに……? 本当!?」
「うん。ただ1つやってもらいたい事があるんだ!」
「うん! 聞くよ」
「ライル・リ・トリーユを、倒してくれ」
「ライル・リ・トリーユ……? そいつを倒せばいいんだな!」
「あぁ。頼んだよ。女神からの、試練とでも思っていてくれ」
― ― ―
女神からの試練……
転生……
私は、本当に異世界転生をしてしまったのか! 漫画の中でしか見たことがない、あの異世界に!
お兄ちゃんはそういうのに全く興味なかったみたいだけど……女神様が言うなら、お兄ちゃんも異世界にいるらしいし、転生特典は何貰ったのかなぁ。お兄ちゃんなら、安全な地位とかもらってたりして!
あの、短期なお兄ちゃんだから、悪役貴族だったり……あははは! 会えるのが楽しみだなぁ!
先に逝ってしまったお兄ちゃんに……私に優しかったお兄ちゃんに。
また会えると言うなら、私は何処へだって行ってやる!!
女神の作り出した、魔法陣に包まれながら、期待を胸に目を閉じた。
「……よう。姉ちゃん。大丈夫か?」
「……んー?」
「おぉ! 良かった。目を覚ましたか! いやぁ、てっきり重症かと思ったぜ!」
ここは……? もう転生してきたってことで良いのか?
……じゃあ一体、このおじさんは誰?
「姉ちゃん、名前は?」
「私か? ……私は……」
ここはなんと名乗るべきか……本名で良いのか? まぁ、関係無いか!
「……私は、深鈴」
「ミレイか! よろしくな! 俺は、ルグル。ここの副ギルド長だ! 因みに、ギルド長はあっちな!」
あっち?
ルギルの指す方に居たのは、白い髭のはえた老人だった。
あれが、ギルド長……ヨボヨボ……あれで、仕事を……大丈夫かな?
「それで? 姉ちゃんは何をしてたんだ? ギルドの目の前で倒れ込んでいたって話だ。どうしたんだ?」
「ギルドの前で?」
いきなりギルド前に転生したってことかな? じゃあここはギルドのなか?
なんて、説明すればいいんだろう……
「もしかして、記憶喪失か?」
「記憶喪失……?」
「あぁ、最近多いんだよ。魔物退治に行った奴が、名前は覚えてるのに他は何も覚えてないってんだ」
魔物……? そうだなぁ……その都市伝説みたいなの使わせてもらうかな。
「……私は、名前は覚えてますが……どこから来たんでしょうか?」
「まぁ、剣を持ってるみてぇだから、冒険者だったんだろうな! ま、歓迎するよ! 冒険者は、皆の味方だからな!」
……厨二病! 名言みたいに言うやつ……
でも、とりあえず、これで野宿とかにならなくて良さそうだ。
私は、ついに2次元で過ごすのかぁー!
― ― ―




