学校案内
014
入学式……
え? 何の? 何かの学校の事ではあるんだろうけれど、どう言うこと?
「これは……封筒?」
さっきの男の子から、知らぬ間に封筒らしき物を貰っていたらしく、手の中には厚みのある白い封筒が握られていた。
いつの間に、、さっきのはキアと言ってたか? すんごい速さで通っていったけど、何者なんだ?
……とにかく、母さんに見てもらおう。
「お母さん! 何か貰ったよ! これ封筒だよね!」
「勢い良く戻ってきたと思ったら、一体何をもらってきたのかしら」
少し困った顔を見せながらも、ライルの持っている封筒を受け取った。
「学校、案内状? って書いてあるけど……」
「やっぱり? さっき男の子から貰ったの! 良かったら、学校に来てね! って言ってた!」
「良かったら学校に来て……って、どう言うことよ……無料なのかしら」
確かに。良かったら来てって、無料ですよって言っているようにも思えるよな。
「えー、この案内状は、都立魔法科学校の案内です。王都に住む、6歳の男女が無償で入ることができる、魔法を主に学習する学校です。」
おぉ! 魔法科学校! 魔法の勉強ができるのか! そして、無料! これは、前世で貧乏で、節約をしていた俺にはもってこいだな! 無料なら、大歓迎だぜ! ま、今は関係ないけど……
「年々、魔法を扱えるものが減っている今、どなたでも大歓迎! この学校には、寮があるので、保護者の方に負担をかけないよう精一杯やらせていただきます! だって! これ凄いよ!」
「寮か……確かに。楽しそう!」
年々、魔法を扱えるものが減っている……か、やっぱりクロヒが言っていた通り、魔法を使えるのは凄いことなのか。
「あ、まだ続きがある。……今年は、2人を招待しております。もしよろしければ、7月の学校体験にお越しください。入学式は9月を予定しております。……あら、2人しかいないのね。今年は」
「へぇー! もう一人は誰なんだろう?」
「行ってみれば分かるんじゃない?」
確かに行ってみればわかる! 興味はあるし、楽しそう! だけど……また、一人になったらどうしよう。前世みたいに、短気だ。なんだ。って言われたくない……
「……楽しそうだけど……」
ライルの様子を察したらしく、しゃがみこんで言った。
「行きたくなければ、いいのよ。家で勉強をしましょう? お母さんが、鍛え上げてあげるわ!」
母親は、微笑みながら、ライルの頭を撫でた。
……母さん。
よし! 俺は、学校に行ってみせる! 母さんが俺を応援してくれているんだ! ここでの幸せを、後で返してみせる!
「僕、学校に行くよ!」
「良かったわ! それじゃあ、パパが帰ってきたら、お話ししましょうね」
学校かぁ……きっと、魔法以外も勉強するん……!? 魔法以外……文字も!? 俺、文字だけは苦手なんだ……
この世界の文字は良くわからない。言葉は、前世と同じなんだけど、文字は漢字のようなそうじゃないような…… あぁ、それを勉強しないと。もちろん、魔法も……
「……僕、裏庭で練習してくる……」
そう言うと、トボトボと玄関から出ていった。
そんなライルを、母親は優しく見守っていた。
「行ってらっしゃい」
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「ちょっと! まだなの! 早くしなさいよ!」
「は、ハイッ! 只今、準備中でして、後5分で‼」
あぁもう! 遅い! 遅い! 早くしないと、あいつが学校に行っちゃうじゃない‼
でも、予想外だぞ。学校に行く気になるなんて。前世の記憶とどうやって戦っているんだよ!
俺なんか、もう10年あれを忘れたことはないのに!
まあ、これから最高に楽しいことがアイツには起こるんだから、今何をしたって遅いのだがな!
「テイメ様! 準備ができました。いつでもどうぞ!」
「今すぐにやれ!」
「はっ!」
『起動。……実行すると、神の規約に触れますが、よろしいですか?』
規約? 俺に規約なんてない。通用しないも同然だ。
「良いから、早く」
『了解しました。どうぞ』
やっとか。
椅子に座っていた女神テイメは、移動のために席をたった。
☆☆☆
「やあ、深鈴くん。調子はどうだい?」
「貴方は……誰でしょうか?」
「私は、女神さ。君を異世界に転生させる役割を担った」
「いせ、かい……?」




